ある町で内乱が起こりました。町長と長老が敵対して、町中が二つにわかれたのです。町長と長老、どちらの側につくも自由です。
そうして、隣人が敵であったり味方であったりする中、一つの家族がどちらにも味方せず、中立を保っていました。けれど他の町人たちは、その家族に決断を迫ります。
「どちらに味方するんだ!」
「あんたたちなら、長老につくだろう!」
「町長を見捨てるのか!?」
「すぐに決めろ!」
「決められないのなら、敵だとみなすぞ!」
『決めろ!!』
その家族には、夫婦と一人の小さな娘がいるだけでした。
困り果てた夫婦は、悩んだ末に、娘にきめさせることにしました。
「カスカ=タカタ。聞いてちょうだい。今、町長様と長老様が争いを起こしているの。わたしたちはどちらにも味方したくはないけれど、争いにまきこまれたくはないけれど、どちらかに味方しなくてはならないわ。よぅく考えて答えてちょうだい、カスカ=タカタ。あなたは、町長様と長老様、どちらに味方したい?」
少女はお母さんの顔をじっと見ていました。
「町長さまと長老さま、どちらかを選ぶの?」
「そうだよ。選ばなくてはならないんだ」
お父さんが答えました。
「ユラハ=レイルウは? どっちの味方?」
「ユラハ=レイルウ?」
お父さんが眉をしかめました。
「確か、町長様に味方しているよ。でも、そんなの気にしなくていいんだよ」
「そうよ。カスカ=タカタが好きな方を選べばいいの。お友達のことなんて、気にしないで」
お父さんとお母さんは言いました。
「それなら、長老さまかなあ。だってね、この間おかしとおもちゃをくれたのよ。だから、カスカ=タカタは、長老さまの方が好き。でも、本当はどっちも好きよ。だってね、だって――」
一生懸命少女は喋り、そしてお母さんとお父さんを見て、にっこり笑いました。
「だってね、町長さまは私のおじさまだし、長老さまは私のおじいさまだもの」
その国は、その後六年と十四日間の内戦を続け、最後には数人の子供だけが残り、壊滅した。
生き残った子供たちは、シェイラン=シェイリン、カスカ=タカタ、クルウ=ラハト、シュライザ=ガスドナの四人。シェイラン=シェイリンとカスカ=タカタは長老に、クルウ=ラハト、シュライザ=ガスドナは町長に味方していた。このことからも分かる通りに、六年と一カ月二十九日間続いた内戦は、勝者のないままに幕を閉じた。