初版:2009 年 9 月 講談社
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実の母を殺して逃亡した幼馴染みのチエ。彼女の行方を独力で追おうとするみずほは、チエの友人、恩師、元恋人と、チエと関わりのあった人々を次々と訪ねてゆく。
そこで見聞きするチエとその母の姿は、彼女の知る仲睦まじい彼女たちとどこか食い違っている。
母と娘という血で結ばれた女同士の繋がり、結婚への夢と重圧、仕事、妊娠。現代の女性を取り巻いている問題がこれでもかとつめこまれている。一冊に多くのテーマをぎゅうぎゅうに取り入れるのはいかにも辻村さんらしい。
残念ながら、私は彼女たちの問題を理解できない。結婚や妊娠への願望も、母という人物へ大きな期待を寄せてしまう感覚も、私にはわからない。
登場する女たちは誰もかれも中学校の女生徒のような関係しか築いていない。女同士で集まり、結束し、互いに引き立てあい、裏切りを許さない。私が一度も足を踏み入れたことのない世界だ。
彼女たちはその狭い輪のなかで苦悩する。そんな輪は捨て去ってしまえばいいのに、と単純な私は思う。けれど、そうしては生きてゆけない場もあるのだろうな、とも想像する。
何が彼女たちをあそこまで追い詰めたのか、と考えてみても、ぼんやりとした輪郭が見える気がするだけで、それすらも合っている気はしない。
結局のところ、彼女たちに足りなかったのは自分で自分を肯定する力だったのかなと淡く思う。友人に、取り巻きに、男に、子供に――そして母という自分ともっとも近しいはずの生き物に、自分を肯定していてもらわねば生きてゆけないという弱さ。自分が自分を肯定できないゆえに、自分ひとりでは頼りないゆえに、他の誰かにすがらねば生きられない弱さ。
それは多かれ少なかれ誰もが持ち合わせているものだろうとはいえ、彼女たちの場合はそれがあまりに顕著で、痛々しい。たった一言、「あなたはそうなのね。私とは違うのね」と考えてしまえば済むことを、彼女たちはできない。
この小説のエンディングは希望だろうか。彼女たちの幸せは、肯定をひと任せにせず自分の足で歩いてゆくこと以外に、あるんだろうか。私にはわからないことだ。