メモ
2013.01.20
 以前ひとにすすめられていたのをようやく観た。

 リチャード・ギア演じる主人公ジュリアンは女性を「悦ばす」ことを生業にするジゴロ。ふざけ、笑い、いつでも「装う」ことをやめないジュリアンの前に議員の妻であるミシェルが現れることで、彼は自分の満たされない部分を直視させられる。「私が気持ちいいだけであなたにとってこれは『お務め』」と言ってジュリアンとのセックスを拒否するミシェルは、ジュリアンにとって人生に初めて照らされた光である。

 自分が悩んでいること自体を棚上げにし金稼ぎ一辺倒の生き方に逃避したのはジュリアン自身なわけで、この生活に至るバックボーンが見えないためになおさら彼に同情はできない。でも、そんなどうしようもない人間のところにやってくるから、ミシェルが聖女として輝くわけだ。

 男娼(とはジュリアンは少し違うが)というと『娼年』(石田 衣良)という大好きな小説を思い出す。殺人という大きな事件を絡めた本作よりも女性を悦ばす職業の男により焦点を絞った『娼年』の方が好きで、折にふれてはその影が脳裏に降りてきたのもジュリアンに寄り添うことができなかった理由かもしれない。

 古い映画なので最近の映画のハイテンションに慣れているとゆったりとした映像に見えるんだけど、それはまあ当たり前のことなので。