メモ
2013.05.22
 ベーコン展を観てきました。本当はきちんと記事にしたいのですが諸事情あって余力がないもので、とりまここで。

 行くか行かないか迷っていた美術展で、だからこんな会期終了間際(東京での会期は5/26まで)に行くことになったわけですが、結果として、観に行って非常によかったです。入場して最初の一枚目を観てもう気がつきました。当たりの美術展に来たと。

 ベーコンの絵がある空間というのが、私には非常に居心地のよいものでした。色彩を使い出す中期よりも、紺の背景が多い1940〜50年代あたりのものが私としては好みにどんぴしゃ。
 いろいろ言葉を探ってみましたが、「居心地がいい」という言葉以上にぴったりくる表現が思いつきません。展示の仕方が非常にすっきりしていたのも助けになったと思います。ベーコンの絵が壁に並んでいる環境にただ佇んだり、座ったりしているだけで、心がすーっと落ち着いてゆく。

 自分の頭にあるものを表現する、ということに、おそらく恐ろしく冷静な感性で完璧に限りなく近く成功した画家なのではないだろうか、というのがベーコンという画家に対する感想です。
 やはり絵は実物を観ないとわからないな、とも思いました。ベーコンの名前も存在も絵もなんとなく知ってはいましたが、自分にとってこれほどぴったりの画家だとは一切気がつけなかった。
 ベーコンの脳にあったものと、彼がそれを的確に、過不足なく、自分の思うままに描き出すだけの技術と方法を身につけてくれたことが、私があんなにもベーコンの絵の並ぶ空間に居心地のよさを覚える理由であったでしょう。

 こんな風に小説を書ければいい、とも思いました。もう久しく小説を書いていない私が言うことではないですが、こんな風に、自分の頭の中にあるものをあるがままに描き出すこと、そのために何ひとつ間違えないことが、私が小説を書く時の理想であると、まさしくこれが理想であると、目の開く思いで思い、感じました。