Bagdad Cafe Out of Rosenteim
1987年 西ドイツ
監督 : パーシー・アドロン
キャスト : マリアンネ・ゼーゲブレヒト / CCH・パウンダー / ジャック・パランス / クリスティーネ・カウフマン / モニカ・カローン
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旅行先で夫と喧嘩別れしたドイツ人・ジャスミンと、ぐずだのろまだとなじってばかりだった夫をとうとう追い出したカフェ兼モーテルの店主・ブレンダ。ジャスミンはバグダッド・カフェにひとり滞在を始めるけれど、ブレンダはどうにも周りへの当たりがきつい。そんなふたりの、出会って、もめて、意気投合するまでの物語。バグダッド・カフェに起居する人々とジャスミンとの交流も交えてストーリーが進むなかで、やがて彼女は奇妙なよそ者から、バグダッド・カフェになくてはならない存在になっていった――。
ジャスミンの人物像がとてもいい。バグダッド・カフェの女主人であるブレンダは夫にも子どもたちにもイライラしてばかりの女性で、ずっと笑うことのない生活を送っている。逆に、ジャスミンは笑顔を絶やさない。異邦の地でひとりぼっちになったジャスミンには、相手に受け入れてもらう方法が笑顔しかない。生来の性格もあるだろうけれど、決してそれだけが理由の他意のない自然な笑顔ではなくて、ブレンダに好感を持ってもらうための(追い出されないための)笑顔でもあると思う。
ブレンダにとってそんなジャスミンはとても奇妙な人間にしか見えなくて(なにしろアメリカの片田舎に突然車もなしにあらわれたドイツ人だ)、追い出そうとやっきになる。けれどブレンダとは逆に、彼女の子どもやバグダッド・カフェのほかの住人たちは、次第にジャスミンを受け入れていく。そしてやがてブレンダ自身も、ジャスミンの存在に心が安らぐようになっていって――。
とても自然で、ありのままの人と人のふれあいの物語だと思う。後半に入ってからのブレンダの笑顔がとても明るくて楽しくて、ジャスミンの笑顔も機嫌をうかがうようなものではなくなって、観ていてる方まで笑顔になる。
荒野にぽつんと存在するバグダッド・カフェが、さびれた場所から通りかかる人の楽しみになっていく。たったひとりのよそ者が持って来た変化が、とても大きくて暖かい。