2008年 日本
監督 : 佐藤信介
キャスト : 松下奈緒 / 夏帆 / 井坂俊哉 / 池松壮亮 / 塚田健太 / 岡本杏理 / 戸田菜穂 / 高杉瑞穂 / 伴杏里 / 風間トオル / 藤村志保
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両親の離婚で、母の田舎にやってきた中学生の杏。地元の少年・大悟やその友人たちと打ち解けて町に馴染み始めたころ、母が真夜中に姿を消した――。
中学時代から十年以上を経て、杏が大悟ともう一度めぐりあう物語。
原作が少女マンガなのでどうにも気恥ずかしいシーンが多かったけれど、映像の持つ雰囲気がとても好きだった。観る前はただのラブストーリー映画だと思っていたけど、オープニングを観た時点で、いい映画を撮る監督じゃないかって直感した。この監督の作品はほかにも観てみたい。
少女時代と大人になってからで当然俳優が変わるのだけれど、大人になってからの主人公ふたりにどうにも違和感がぬぐえず残念。逆に、少女時代を演じた夏帆さんはとてもよかった。好きな女優のひとりになりそう。
はっきりと名前が出てくるわけではないけれど、杏も杏のお母さんも、うつ病をわずらっているような描写が随所に出てくる。私自身が精神的に不安定になることが多いので、杏のせりふや心境はとても理解できる。
「手を離していいよと伝えたかった」とか「このまま大悟と一緒にいたら、私は大悟を押しつぶしてしまう」とか。
そんな杏にとって、映画のラストで大悟が贈ることばは、とても心強く嬉しくあたたかいものだったろうと思う。あのエンディングは文句なしで良い。
はっきりと覚えていないので断言できないけれど、作中では、ふたりが手をつなぐ描写は出てこなかった気がする。手をつなぐ、というのはどちらかがどちらかによりかかっていてはできないことで、ラストシーンでふたりが手をつなぐことは、杏と大悟がきちんと対等になれたことを象徴してるんじゃないかと思っている。
原作でどこまで杏の心をきちんと扱ったのかわからないけれど、脚本も手がけた監督は、ずいぶん自分の色を出したのじゃないかという気がする。もっとベタなラブストーリー映画だと思っていた私には予想外なしんどさだったけれど、心の描写をなあなあで済ませて軽い映画に仕立ててしまうよりもずっと好感が持てた。
原作の設定だけを持ってきて、監督がもっともっと自由に撮っていたら、ぐっといい映画になったんじゃないかなあ。あとは、俳優さんの演技力と。好きな映画、といい切るにはひっかかるところがあるのが、とても残念な映画。