Savage Grace
2007年 スペイン / フランス / アメリカ
監督 : トム・ケイリン
キャスト : ジュリアン・ムーア / スティーヴン・ディレイン / エディ・レッドメイン / エレナ・アナヤ / ウナックス・ウガルデ / ベレン・ルエダ / ヒュー・ダンシー
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自分の幸せに貪欲な母バーバラと、彼女が自分の幸せのために選んだ大富豪の夫ブルックス、そして二人の息子トニー。バーバラのあまりに奔放な行いに愛想をつかしたブルックスが家を出てから、バーバラとトニーのふたりきりの日々が始まった。異常なほど親密なその生活は、次第にゆがんでゆく――。
実際にあった事件を元にした映画ということで興味が湧いて観てみた。
劇的なという形容詞がよく似合う話で、一度観ただけではとても消化しきれない。できればあと2、3回観てもっとかみ締めたい映画。
すべての人物がバーバラによって振り回され翻弄されているのだけれどその中心にいるはずのバーバラはたぶん誰よりも孤独で、満たされていない。彼女にはどこにも救いがなくて、ラストシーンまでずっと、彼女の心のうちにはどうしてこんなにもうまく行かないのか、という思いが渦巻いていたように見える。
そして、その息子でありほとんど彼女と同一化しているように見えるトニー。彼は結局、一度も母から独立できないまま、ひとりの人間として立ち上がることができないままだったように思う。母と息子の関係というのは娘とのそれよりもずっと特殊だと個人的には思っているのだけれど、それが悪い方へ悪い方へと転がり続けたのがこの二人ではないか。バーバラの心が生み出した惨禍の集大成が、トニーという存在なのだと思う。