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イントゥ・ザ・ワイルド
Into the Wild
2007年  アメリカ
監督 : ショーン・ペン
キャスト : エミール・ハーシュ / ハル・ホルブルック / キャサリン・キーナー / ウィリアム・ハート / ヴィンス・ヴォーン
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 アラスカの荒野へひとり向かい、そこで人生の最後を迎えた青年・クリス。アトランタの大学を優秀な成績で卒業した彼は、何のために荒野へ向かったのか?

 劇場へは2度足を運んだ。1度目に観たとき上映時間を勘違いしていて15分ほど遅刻してしまったからというのがその主な理由なのだけど、2度目を観終えたとき、何度でも観たい映画だと思った。

 クリスはひたすら文明から離れた場所で生きようとする。劇中で、「人は人生で一度、原始の人々と同じ環境で暮らすべきだ」といったことばがクリスから発される。
 彼は何に対しても真摯で、常に真実を求め続ける人だった。そういう人にとって人間の社会がいかに生きづらいかは言うまでもない。

 この映画は実話に基づいている。アラスカでの日々は、おそらく彼の遺品にあった手記によっているのだろう。映画はクリスの死の間際の心中までえがいているけれど、もちろんそれは製作した人がクリスの手記を読んでふくらませた想像でしかない。それをふまえた上で、彼の“幸福”に関するひとつの見解は深く心に残る。

 「クロッシング・ガード」でも思ったけれど、ショーン・ペン監督は人間のおろかな面やよわい面に対する視線がとても優しい。クリスの不器用すぎる生き方を、若さや生真面目さという簡単な理由に結論づけたりしない。そんな浅くて安直な片づけ方をしない。若いから、不器用だから、不幸な家庭環境だから。人の行動の理由を安易に推察することの罪深さと浅はかさを知っている人だと思う。
 クリストファー・マッカンドレスというひとりの青年をえがいたこの映画が、この監督によって撮られたことが嬉しい。

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 DVDでまた観たので覚え書を追記。
 この映画は、母親がいなくなったクリスの夢にうなされて飛び起きるシーンから始まる。クリスは魅力的な人物だけれど、両親を置き去りに旅に出た彼は決して正しくない。最初に両親のシーンが入ることでそのことがしっかりと示される。

 クリスに出会った人々は、「俺にもあんな頃があった。けれど俺はあんな風には生きられなかった」と思うだろう。

 自分の道を歩んでいく人だから、愛しても、愛されても、一緒にはいられない。

 観れば観るほど、なぜあなたが死んでしまうのか、と感じずにいられない。
2008.10.01