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永遠のこどもたち
El Orfanato
2007年  スペイン / メキシコ
監督 : ギレルモ・デル・トロ
キャスト : ベレン・ルエダ / フェルナンド・カヨ / ロジャー・プリンセブ / マベル・リベラ / モンセラット・カルージャ
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 幼少期を孤児院で過ごしたラウラは、夫と養子であるシモンとともにかつての孤児院に移り住みホームを開くことを決めた。しかしそのオープニングパーティの最中、シモンは姿を消してしまう。シモンを追い求める苦悩の日々が始まった――。

 「パンズ・ラビリンス」の監督ということで観てみた。けれど、ホラーだと思っていなかったので予想以上に恐怖演出が多くてびっくり。ホラーは苦手ではないけれど好きでもない。ホラーを映画館で観たのは初めてかも。

 孤児院で起こった過去の事件の亡霊と現在の事件がからみあってストーリーは進んで行く。
 ギレルモ監督が独特だと思うのは、現実と非現実をきっちりとわけているところ。現実に起こった事件はあくまでも物理的な因果によるものであって、幽霊や悪魔といった非現実的なものによる仕業ではない。そして現実の事象とはきっちりと隔てられたところに非現実の者たちが存在している。
 非現実要素の入ったストーリーならすべての原因をそこに帰結してしまいがちだけど、ギレルモ監督はそういうことをしない。だからこそ救いがない。悪霊のせいだと思えれば諦めもつくかもしれないけれど、人間の手によるものでは悔いることしかできなくなってしまう。実はとてもシビアなリアリストなんじゃないかと思えてくる。

 シモンを探し続けるラウラの姿に母の強さを感じる人は多いと思うのだけど、私は彼女がとても弱い人間に感じられて仕方がなかった。ラウラは時が経つほどに視野がせばまって、ひたすらにシモンの姿だけを追いかける。その理由の一番深いところには、きっと罪悪感があったのだろうと思う。
 シモンだけに目を向けることで夫は取り残されてしまう。今そこにいる人への配慮ができない視野のせまさは、自分の所業や現実を受け入れられない弱さから来るのだと思うのだ。
 ラストシーンで、夫であるカルロスにはなにが見えていたのか。暗い想像をしてしまうのは、考えすぎだろうか。

 「パンズ・ラビリンス」に比べると小粒な映画だったなと思う。
2009.01.04