2008年 日本
監督 : 滝田洋二郎
キャスト : 本木雅弘 / 広末涼子 / 山崎努 / 余貴美子 / 杉本哲太 / 峰岸徹 / 山田辰夫 / 橘ユキコ / 吉行和子 / 笹野高史
>> eiga.com
所属していたオーケストラが突然解散となり、職を失ったチェロ奏者の大悟。「田舎に帰ろうかなあ」という弱気な一言に、妻は笑ってうなずいてくれた。亡き母が暮らしていた家での生活が始まり、大悟は職探しを始めた。そこで見つけたのは、「旅のお手伝いをする仕事」。
私は納棺士という仕事をこの映画で初めて知った。人の最期にそっと寄り添い、遺族のために美しく死者を送り出す仕事だ。この映画でえがかれている姿がどれくらい現実に近いのかは知らないけれど、もしこの映画のように死者の姿を整えてくれる人がいるのだとしたら、それは遺族にとって大きな慰めになるだろう。
実際に自分の祖父の死を看取った経験から言うと、身内の遺体は不気味でも気持ち悪くもない。遺体である以前に、自分の見知った慕わしいひとりの人間であるからだ。
けれど同時に、赤の他人にとって遺体というのは恐ろしい存在、忌まれるべき存在であるということも理解している。ここで遺族は感情と理性の板挟みになってしまう。大切にしたい、けれど他人にまでそれを求めることもできない。
そんなときに、仕事とはいえ他人である納棺士が遺族以上にていねいに、この映画であったように死者に接してくれたなら、それは遺族にとって深い慰めと癒しになるだろう。それはまがいものではない。きちんと心に行き渡る本物だ。
映画としてはわかりやすい人情的なストーリーなので、個人的に高評価の映画というわけではない。私の感覚からすると、コミカルなシーンが多いかなとも思う。同じ2008年の邦画なら「トウキョウソナタ」の方が好きだ。
けれど単純にいい映画を観たいというなら、「おくりびと」の方が多くの人に受け入れられる映画だろうなと思う。