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スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street
2007年  アメリカ
監督 : ティム・バートン
キャスト : ジョニー・デップ / ヘレナ・ボナム=カーター / アラン・リックマン / サシャ・バロン・コーエン / ティモシー・スポール
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 理髪師ベンジャミン・バーカーには美しい妻と幼い愛娘がいた。彼女を手に入れたいという欲望に駆られた判事によって、ベンジャミンは無実の罪を着せられ流刑にされてしまう。15年を経てロンドンへ舞い戻ったベンジャミン・バーカーは、スウィーニー・トッドと名を変えて判事への復讐を開始する。

 公開当時にはデップが歌うということで騒がれていたけど私は歌のうまさというのがよくわからない人なので(耳がとてもロースペック)、そこはノータッチで。

 この映画では、登場人物のそれぞれが上を向き、右を向き、東を向き、過去を向いている。誰一人としてだれかと同じ世界を見ていない。その上、誰もが自分の内面世界だけに注視して外の世界に意識を向けない。目の前にいる人物についても、その人自身ではなくて自分のなかにいる彼ら彼女らしか見ていない。だから、それぞれに執着し愛している人物がいるのに現実の相手の本性や正体が見えていない。
 そんな、決して交わらない恋慕の矢印が飛び交うなかで世界を共有しおなじ感情を込めて歌を歌い上げるのがトッドと判事のふたりであるというのがまた最高に皮肉的。ふたりは対極の存在だけど、だからこそ同類であるとも言える。

 映像的には血が飛び散るしストーリーのなかには人肉食が登場するし、わかりやすい気持ち悪さを感じる要素はたくさんある。けれど、登場人物たちの破滅的なまでの盲目さに一番ぞっとした。
 ティム・バートンらしいと言えば言える童話的なストーリーだけど、いつになくユーモアの度合いが低くてブラックさが前面に出ている気がする。
2009.02.06