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ファイト・クラブ
Fight Club
1999年  アメリカ
監督 : デビッド・フィンチャー
キャスト : ブラッド・ピット / エドワード・ノートン / ミート・ローフ / デビッド・アンドリュース / ジャレッド・レト / ヘレナ・ボナム・カーター / ザック・グルニエ
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 何をしても満たされない日々を送るジャックは、ある日せっけん販売をしているという男・タイラーと知り合う。タイラーにそそのかされタイラーと殴り合いを始めたジャックは、拳で人を殴る爽快感に陶酔した。そして殴り合う彼らの周りには見物人が集まり、やがて拳闘のための秘密組織「ファイト・クラブ」が結成された――。

 映像面の面白さもストーリーのテーマも、「ウォンテッド」を真っ先に思い出した。

 映像の斬新さはどうしても負けるけれど (「ウォンテッド」の脚色たっぷりの映像構成は規格外だと思ってる)、それでも10年の年月の差を考えれば充分にタメを張る映画だと言えるだろう。こんな映画が10年前にあったことに驚いた。公開当時に観ていたらこの斬新さにもっと純粋に驚きを感じられただろうに、もったいないことをした。

 そして、ストーリーには自分の人生に振り回されることに対する皮肉がたっぷり込められている。ジャックはタイラーに出会うことで決められた慣習からぐんぐんと抜け出していくけれど、自分の人生を本当に我が物として生きるというのはどういうことなのかが、最後まで何重にも問われ続ける。このあたりも「ウォンテッド」に通じるものを感じる。

 自分の人生に対してジャックが抱いていたぼんやりとした不安感、それを蹴散らすタイラーへの羨望と、自分の拳で人を殴ることで得る快感。そして、まぶしく頼れる存在だったタイラーが理解できない生き物に感じられていく過程、進行していく不気味な事態がまったく把握できないじりじりとした焦燥感。
 全編を通して感情の描き方がうまい。感情的な人間にはできない、機能的で計算された演出や表現でジャックの内面がえがかれていく。感動、楽しい、心にせまる。そういう誉め言葉よりも、うまい映画だと言うのがしっくりくる。
2009.04.09