初版:2003年05月 新潮社
蔵本:2005年12月 新潮文庫
>> Amazon.co.jp
春休みに入ったとたんに入院したナオトは、そのまま病院で誕生日を迎えることに。テツロー、ダイ、ジュンの 3 人は、ナオトのために特別なプレゼントを用意しようと決めた。――「びっくりプレゼント」
月島に暮らす 4 人の 14 歳の一年を、9 つの短編で追っていく。
私のなかで石田衣良さんの作品は『IWGP』系統と『娼年』系統のふたつにわけられるのだけど、『4 TEEN』は『IWGP』系の作品だった。
語り手のテツローと、早老症のナオト、大柄で大食いのダイ、小柄で頭の良いジュン。とてもシンプルにキャラクター付けされた 4 人の中学 2 年生の 1 年間を軽快に描いていく。舞台の月島は、衣良さんが 1 作目を書いたときに実際に住んでいた土地だ。
4 人が生きているのは現代で、決して昔を振り返って書かれた小説ではない。なのに、どこかなつかしさが感じられる。それは私自身が 14 歳だった時代をなつかしむ世代だからという以上に、衣良さんがなつかしみながら書いているからというような気がする。
テツローの語り口には、最近の中学生にしては古くさい言いまわしが入り混じっている。それは衣良さんがいまどきの中学生をとらえきれていないということじゃなくて、自身の中学 2 年生当時の世界を見る感覚を思い出しながら今を描いているからじゃないだろうか。
無理に “いまどき” を追いかける必要なんかない、どうせなら小説の舞台を自分が 14 歳だった時代にさかのぼって書けばいいじゃないか、という意見もあるかもしれない。
けれどきっと衣良さんは、いつでも今をみつめていたい人なんじゃないかと思う。若者ぶりたいとか理解者ぶりたいとかそういうことではなくて、今目の前にあるものをただただ慈しんでいるんじゃないだろうか。
衣良さんは 14 歳だったころの感覚を自分のなかによみがえらせて、現代の月島を見えたままに書き出したんだろう。テツローの語ることばは衣良さん自身が 14 歳だったころのことばで、けれど見ているものは今の東京だ。そんな風に何十年と時間を越えた視点と世界が交わっているから、『4 TEEN』には今らしさとなつかしさが同居しているように感じられるんじゃないだろうか。
無理にいまどきの中学生のことばを使うことをせず、自分の持っていたことばで今見えているものを書く。衣良さんの小説にはいつだって、心地よくて力まない雰囲気があると思う。