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『ぼくのメジャースプーン』 辻村 深月
ぼくのメジャースプーン
初版:2006年04月 講談社ノベルス
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 ぼくは、小学校 1 年生のころから仲良しのふみちゃんが大好きだった。
 4 年生になって学校で飼っているうさぎの世話当番になったぼくやふみちゃん、クラスメートたち。誰よりも賢くて優しいふみちゃんは、とても大切にうさぎの世話をした。そんなふみちゃんとうさぎが、ひとつの悲劇に襲われる。
 ぼくはふみちゃんを救うため、戦うことを決意する。特別な力を使って――。

 必死になって、読み進めていた。“面白い” という感想は、物語を楽しむ余裕があるからこそでてくる言葉なのだと痛感した。小学 4 年生の “ぼく” という一人称で物語が進むからか、切実で、痛ましくて、けれど強くて、面白いと感じる余裕もなくただ必死で読み進めていた。

 “ぼく” が直面した現実は、とても厳しい。幼い心は一途すぎて、その現実をやり過ごすこともあいまいにしてしまうこともできない。 “ぼく” が自分自身でけじめをつける方法を模索する、その 7 日間の物語。
 そのけじめの方法は、彼なりの罰のかたちを見つけること。そして、自らその罰を与えること。

 彼の模索の方法も、出された結論も、すべてひっくるめて彼の罰のかたちはとても痛々しい。そんな風に考えないでと、懇願すらしてしまいそうになる。
 けれど、自分に対して厳しすぎるそんな彼も、彼が敬愛している彼女も、きっと救われるだろう。彼は彼女を救おうとしたけれど、人は救うばかりではない。自分が救おうとした人にこそ救われるなんてことは、ままあることだ。

 懸命な “ぼく” が過ごした、現実を見つめてとらえて、けじめのかたちを見つける 7 日間。彼が出した答えを、私は正しいとは思わないけれど、それでもこの 7 日間が彼にとってかけがえなく貴重なものになるだろうことは、うれしく思う。
2007.08.21