映画 > 邦画:アニメーション
サマーウォーズ
2009年 日本
監督 : 細田守
キャスト : 神木隆之介 / 桜庭ななみ / 富司純子 / 谷村美月 / 斎藤歩 / 横川貴大 / 信澤三恵子 / 谷川清美 / 桐本琢也 / 佐々木睦
>> eiga.com

 憧れの先輩である夏希に頼まれ、彼女とともに夏希の実家へ出かけることになった高校二年生の健二。その旅行の最中、仮想世界 OZ でアカウント乗っ取り事件が起こる。広がっていく被害を食い止めるため、健二は夏希の家族と共に動き出す。

 キャラクターデザインが貞本義行だということ、評判が良いということ以外は一切知らずに観に行った。行ってよかった。今観なければ後悔する映画だった。

 「ユー・ガット・メール」という映画について私は、あの年にしか製作され得なかったし評価され得なかった映画だと常々思ってきた。“見ず知らずの人とメール交換する” ということが目新しく話題性に富んでいたから作品として成り立った映画だ。今同じことをしても古臭くつまらない設定にしかならない。
 同じように、ネット上でのもうひとりの自分、もうひとつの世界というのがまだ目新しい今だからこその面白さを多くはらんでいる映画だ。「サマーウォーズ」は「ユー・ガット・メール」よりも作品としてパワーがある。だから、一年後に観ても五年後に観てもちゃんと楽しいだろう。けれど OZ という仮想世界のワクワク感はきっと今だけしか感じられないものだ。まだ実現していない、けれど実現するかもしれない世界を垣間見る快感は今現在の人間にだけもたらされた特権だ。行使しない手はない。
 特に、今ウェブ上で生きている人ならウェブを知らない人よりも楽しさが倍増するはずだ。少なくとも私は、オープニングの OZ の世界観の説明のシーンからぞくぞくが止まらなかった。

 さらに、現実とウェブ世界の絡ませ方も良い。互いに影響されすぎず、けれど確かにつながっている。OZ の混乱が現実に波及していく様子は近い未来を見るようで背筋の寒くなる思いがした。大人たちには理解できないほど、現実とウェブは垣根をなくしつつある。

 そして、ウェブ世界という要素と対をなすようにこの映画をつらぬくもうひとつの軸は家族の絆だ。その象徴が夏希の大おばあちゃんにあたる栄さんだ。栄さんはそれはもう格好良い。そして言うことがいちいち沁みる。
 これをあざといと見る人もいるかもしれないけれど、実際にお年寄りというのは広い視野と深い心を持っているものだと思うのだ。それをほんの少しはっきりと、現実よりもわかりやすく表現しただけのことだ。

 栄さん以外にも、主人公である数学少年・健二、美人の先輩・夏希、OZ のヒーロー・キングカズマ。そして栄おばあちゃんを筆頭に集まる陣内 (じんのうち) 家の面々。魅力的なキャラクターが大勢いる。一人ひとりの個性が互いを際立たせながら作品を動かしていく。

 私は次の日曜日に二度目を観に行く予定だ。それまでには花札を勉強して。
2009.08.25