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『アフガニスタン 戦乱の現代史』 渡辺 光一
初版:2003 年 3 月 岩波新書
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 2001 年 9 月 11 日のアメリカ同時多発テロで注目を集めたアフガンの歴史を、紀元前から現代(2002 年)まで網羅的に述べている。

 著者は取材記者で、実際にアフガニスタンにも足を運んでいる。その著者が、アフガンの事実を歴史を追って伝えることでアフガンに対し日本がどのような支援をすることができるかを示そうとしている。
 国際紛争に対する考察の深さ、日本がいかに国際紛争に関わっていくかという問題に関しては伊勢崎 賢治の『武装解除 紛争屋が見た世界』の方が深い(これは読み応えのある本だった)。
 この本は国際紛争全般ではなく、アフガニスタンというひとつの国がどのような経緯を辿って来たのかを知るための方法として良書だと思う。アフガンを知る入門にぴったりの一冊だ。

 アフガンは、他国からの干渉により統一と平和を遠ざけられてきた。国民の「アフガニスタンという国に帰属する意識の低さ」が他国に入り込む余地を与え、争い合うそれぞれの民族の背後に他国が隠れているという構図を生んだ。

 私にとって戦争・紛争というのは大きな関心のひとつで、長期間にわたって紛争の現場だったアフガニスタンという国の歴史を追えたこの読書はとても有意義だった。
 現代を生きる人間として初版が発行された当時に読んでおくべきだったと、そればかりが悔やまれる。それでも、アフガンに対する理解の土台となる本として、読んで良かったと思う。
2010.04.28