Burlesque
制作 : 2010 年 アメリカ
監督 : スティーブ・アンティン
キャスト : シェール / クリスティーナ・アギレラ / エリック・デイン / カム・ジガンデイ / ジュリアン・ハフ / アラン・カミング / ピーター・ギャラガー / クリステン・ベル
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私が今まで観たミュージカル映画は「シカゴ」、「ムーラン・ルージュ」、「レント」、「ヘアスプレー」、「NINE」。たったこれだけでこんなことを言うのはおかしいけれど、「バーレスク」のショーシーンは今まで観たミュージカル映画のなかで一番よかった。
私は、ミュージカル映画はショーシーンが楽しめればひとまず及第点と思っている。その点「バーレスク」は、どのショーシーンも捨てがたい魅力を持ったピカイチのショー揃いだった。
なんといっても主人公・アリを演じるクリスティーナ・アギレラのパワフルな歌声がすごい。儚さなんてかけらもない、バラードですら底に潜む力強さを感じさせる、芯どころかどっしりとした柱の通った歌声。ストーリーも登場人物もダンスも大好きだけれど、それでも彼女の歌声がなければ、ここまでこの映画に惚れ込みはしなかった。
同時に、主要人物と脇役それぞれの掘り下げ方のメリハリだとかわかりやすく的確に仕込まれた伏線だとか、一映画としてもしっかりと骨を持っている。そして、ショーシーンを引っ張るのがアギレラの歌声なら、ストーリーを引っ張るのもやはりアリの存在なのだ。
アイオワの田舎町から、ウェイトレスの仕事をやめてロサンゼルスに上京し、ショービズ界に飛び込むアリ。クラブ・バーレスクのオーナーであるテスのなかで、アリは当初「スターという分不相応かつありがちな夢を見る女の子」でしかない。そこからアリが本当にスターにまで上り詰めたのは、ワンマンオーナーであるテスに対峙して一歩も引かない主張の強さと、田舎のウェイトレスとして働きながら磨き上げたダンスと歌の実力ゆえなのだ。
アリは誰にも媚びず、ただ自身の力ひとつで階段を登っていく。自らチャンスを生み逆境を見せ場に変える、アリはなるべくしてスターになった女性なのだ。
素直さと頑固さが入り交じったこのアリの性格が、ストーリーを引っ張り、そしてクラブ・バーレスクに変化をもたらす魅力になる。
脇役についても、実際の描写は少ないながらも想像を膨らませるタネはしっかりと仕込んである。多少おざなりに感じる部分もあるけれど(アリの同僚であるダンサーたちはほとんどが「その他大勢」でしかない)、脇役を脇役としてあくまで軽く扱うことで、アリとテスというふたりの女性の存在が水際立つのだ。
ショービズ界を扱ったミュージカル映画だなんて、この映画は私がどうあっても惹かれずにはいられない要素に満ちている。歌が好きなら、ショーが好きなら、もしくはアリの強引かつ魅惑的な性格に一度引き込まれてしまったら、きっと間違いなく楽しめる映画だと思う。