会場:横浜美術館
会期:2010.09.18-2010.12.31
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初めてドガの絵を観たのは、中学生の時に美術の便覧で、「エトワール」をだった。幼稚園の頃から中学二年までバレエを習っていた私にとって、照明に照らされ美しく踊るバレリーナの姿は忘れがたいものになった。
肖像画、馬、踊り子、浴女と、ドガの描くモチーフは変遷していく。全体を通して、晩年の作より初期から中期にかけてのものがいい。私は踊り子の絵を楽しみに行ったけれど、踊り子をモチーフとする以前の時期の肖像画にも目が引き寄せられた。
ドガの絵は、美術作品になるべくしてなるような誰もが気づく美しさを描いたものではなく、たまたま起こった日常の一瞬をカンバスの上に固着させて、観る側にそこにある物語に気づかせてくれるような作品だと思う。
今回のドガ展のコピーは、「一瞬の中にみる永遠の美。」。
「一瞬を切り取る」という行為は、絵よりも写真の方が得意だと無意識に決め込んでいた。けれど、ドガの絵とその創作姿勢(実物を前にして描くよりも、何度もスケッチや取材をした上でアトリエで描く)を見て知って、違うのかもしれないと考えた。
世界というのは、静止することなく常に流れていくものだ。一瞬の美は、その流れゆく世界を流れゆくままに見ている時にしかわからないものかもしれないと思うのだ。一瞬を連ねた流れのなかにこそ美は存在している。一瞬間だけをただ写し取るのみでは表現することが叶わず、流れを象徴したものを描いて初めて、一瞬の美を表すことができるのかな、と。
「一瞬の中にみる永遠の美。」というのは、ドガの絵にふさわしい、素晴らしく的確なコピーだと私は思う。それは、今回の展覧会の目玉である「エトワール」が舞台の踊り子の一瞬を切り取ったものだからというだけでなく。