メモ
2007.03.26
 長いことこのメモがほったらかしで、申し訳ありませんでした。オフ生活が慌しく、せっかくならゆっくりと「大地の子」の感想を書きたいと思い、結局そのままになっていました。

 23日、金曜の夜に「大地の子」を読み終えました。記憶にある限り、大河小説というのを読んだのはこれが初めてだったのですが、史実を調べ上げて書かれているということを差し引いても、文字だけでこんなにも広い世界を描けるのかと、改めて「小説」という媒体の力を見せられました。
 日本人であるということが、あらゆる面でハンディとなるその場所で、ねじれることなく生きていく一心のたくましさが、涙が出るほどに愛しく、またとても嬉しくなりました。そして同時に、戦争孤児のことをほとんど知らないまま安穏と暮らしている自分を思うと、たまらなく申し訳なくもなります。
 自らを「大地の子」と呼んだ一心は、「国」という枠を超えた、とても大きな視線を持ったと思うのです。愛国心とはまた違う、自分を育んだ大地を愛するという心。そこに人種はないし、優劣もない。大地を愛するということは、そこに暮らす人々を、自らも含めて愛していくということにつながると思うのです。厳しい思いをしてきた人は、強さと優しさを持てると、そんなことを改めて知りました。

 ところでこれはまったくの余談ですが、以前、「自分の子どもに名前をつけるなら?」と考えたときに、男の子につけたいと思った名前は「一心」と書いて「いっしん」という名前でした。

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 「ミミズクと夜の王」、昨日の夜に読了しました。

 「まっすぐ。」この言葉がこんなにも似合う小説は、そうそうありません。どんでん返しはない、意外な結末もない。でも、小説の価値はそんなところにはないんです。
 「つらい」ということを忘れてしまった、忘れずにはいられないほど打ちのめされていたミミズクが、心を取り戻す物語。笑うことを忘れるだけならばまだましで、泣くことすらも忘れてしまったミミズクは、確かに人として壊れていたのです。
 ミミズクはフクロウに救われて、同時にフクロウもミミズクの存在に、孤独や痛みを癒された。その事実が、底抜けにあったかくて、嬉しい。
 抜け出せる磔から逃げなかった夜の王の、その不器用すぎる優しさの形が、私はとても好きです。ミミズクと一緒に、いっぱい幸せになって欲しい。
 おすすめ、ありがとうございました。ミミズクとフクロウに逢えて、嬉しかったです。