メモ
2007.04.16
 12日から読み始めて、今日「永遠の森 博物館惑星」を読み終えました。

 私は美しい文体が好きで、本を読むときはストーリーと同時に、どんな文体で書かれているかというところもずいぶんと気にします。けれど、「永遠の森」に関してはちっとも文体に気を留めないまま、ただストーリーだけを追っていました。それだけ、ただひとつの物語として面白かったです。

 <ムネーモシュネー>を持つ孝弘が、どうにもうらやましくてなりません。求めるものを与えてくれる存在が、いつだってただ後ろに控えてくれている。その絶対的な安心感。けれど、<ムネーモシュネー>が万能であればあるほど、孝弘自身は自分が自分であることの価値を見失っていく。美を愛し求めていたはずが、美を分析しようとばかりする自分になっている。その、理想から遠のいていく自分に気付き、向き合うことが書かれている一冊。
 美術品や芸術品に関する、ロマンティックで純粋なエピソードの数々が登場するけれど、そのまっすぐさと対照的であるからこそ、純粋なだけではいられなくなってしまった孝弘のジレンマやもどかしさが、あたたかい視点で見えてくる。
 最後の最後に登場する美和子は、孝弘にとっての救いの女神のようで、なんだか私まで美和子に救われたような気がしてきます。
 とっても心地良い小説でした。解説にも書いてありましたが、ぜひとも続編が出て欲しいと願いつつ、機会を見つけて読み返したい一冊になりました。おすすめ、ありがとうございました。