「草の竪琴」を読了しました。おすすめ、ありがとうございます。
著されているのは心細くなるほどに繊細な人々で、ただじっと読み進めていました。美しい自然の風景が詩的な文体でつづられる中、社会に対して虚像を被ることをやめた人々が少年の視点を通して語られます。虚像を被ることをやめるというのは、人から求められる自分を演じるのをやめるということ。それは必ず衝突を引き起こします。
人と世間との衝突が起こり、そして“普通”の枠からはずれた者同士がより添い、やがて社会自体とも折り合いをつけてゆく。その一つのできごとが、とても丹念な筆で書かれています。
登場する人々は、それぞれに抱えるものがある。それは一概にやっかいごとや問題ではなく、愛情であったり、願いであったりする。それは、それぞれにとっては決して特別なものでも異常なものでもないのに、世間がそれを受け入れてくれないがため、ありのままでいられる場所がないがために、苦しんでいる。
そんな人々が、樹の上の家で互いにより添って暮らそうとする姿は、切なくも哀しくもありますが、やはり幸せのひとつの形だと思うのです。だからこそ、この小説は全体にとても優しい。ひとときのことであったとしても、安らぐ場所を得たことは、必ずそれぞれにとって救いになるはずです。
語り手であった少年が旅立っていくシーンで終わるこの小説は、決して安直ではない、厳しくも優しい希望を示してくれているように思うのです。
著されているのは心細くなるほどに繊細な人々で、ただじっと読み進めていました。美しい自然の風景が詩的な文体でつづられる中、社会に対して虚像を被ることをやめた人々が少年の視点を通して語られます。虚像を被ることをやめるというのは、人から求められる自分を演じるのをやめるということ。それは必ず衝突を引き起こします。
人と世間との衝突が起こり、そして“普通”の枠からはずれた者同士がより添い、やがて社会自体とも折り合いをつけてゆく。その一つのできごとが、とても丹念な筆で書かれています。
登場する人々は、それぞれに抱えるものがある。それは一概にやっかいごとや問題ではなく、愛情であったり、願いであったりする。それは、それぞれにとっては決して特別なものでも異常なものでもないのに、世間がそれを受け入れてくれないがため、ありのままでいられる場所がないがために、苦しんでいる。
そんな人々が、樹の上の家で互いにより添って暮らそうとする姿は、切なくも哀しくもありますが、やはり幸せのひとつの形だと思うのです。だからこそ、この小説は全体にとても優しい。ひとときのことであったとしても、安らぐ場所を得たことは、必ずそれぞれにとって救いになるはずです。
語り手であった少年が旅立っていくシーンで終わるこの小説は、決して安直ではない、厳しくも優しい希望を示してくれているように思うのです。