メモ
2007.04.25
 「海の底」、きのう一日を丸々つかって読みきりました。この一気読みさせてくれるスピード感と読みやすさ、そして吸引力はさすがです。有川さんの小説は「図書館戦争」、「図書館内乱」、「レインツリーの国」と読んだことがあるのですが、「海の底」も含めていずれ劣らぬ良作ばかり。

 桜祭りでにぎわう横須賀に、人間を捕食する巨大エビが襲来する。荒唐無稽な設定ですが、その上で広がる展開や人物像はリアルそのもの。図書館戦争シリーズもそうですが、この人はでたらめのような世界観のなかの日常を描くのがなんて巧いんでしょう。登場するひとりひとりが魅力的で、その人物造形にはうなってばかり。ベタな展開も、ちょっとあざといせりふまわしもありますが、そんなことはかすんでしまうほどに直球でおもしろい。

 そして、ここがまた重要だと思うのですが、単なる娯楽小説では終わらない。突然の非常識自体が起こったとき、日本はどのような対処できるのか? そんな、現実的でシビアな疑問を、読み終えたときに必ず抱かされます。「海の底」にしろ図書館戦争シリーズにしろ、現代の日本の行く末・あり方という目を背けられない問題が内包されている。

 小説としての単純な面白さとあいまって、二重三重に得るものがある小説です。有川さんのほかの本も、ぜひ読んでみようと思います。しばらくは買いためた本があるので、それをすべて読み終わったあとにでも。