メモ
2007.05.03
「猫に満ちる日」を読了しました。おすすめ、ありがとうございました。
 “良い本”というのは、とにかく面白くてぐいぐい読ませてくれる本と、決して押し付けがましくならず手に取りたいときにだけ読ませてくれる本があると思っています。「猫に満ちる日」は、間違いなく後者でした。

 男とは暮らせない、“女”としてはきっと不完全な女性が猫とふたりきりで暮らす、その様を綴った物語。なにがあるわけでもない、始まるわけでもないふたりの日々を、残しておくためだけに書かれた小説。だから、この本は過不足なくただ読者のそばに居てくれる。なにかを無理に伝えようとも、納得させようともしない。そんな風に在るこの小説は、猫そのもののようだ。しなやかで、寂しくも切なくもあるけれど、絶望ではない。柔らかさを失わない猫の体のように、人が隣に寄り添うことを許してくれる。