メモ
2007.05.18
「狐笛のかなた」を読んでいました。書店で文庫版が平積みされていたときから気になっていたものを、ようやく読むことができました。

 作者の上橋さんはもともと児童文学を書く方で、この「狐笛のかなた」も児童書として書かれたものを文庫化したとのこと。あとがきで上橋さんが、ご自分にとってのこの物語の位置付けを語っているのですが、そのあまりに優しく柔らかくまっすぐな視点に、思わずうっとりします。
 守り人シリーズという、上橋さんの代表作にあたるシリーズは以前から気になっていて、せっかくシリーズものを読むなら一気に読み上げたいという思いの強い私は、ひとまず他の作品から…という気持ちもあって、「狐笛のかなた」を読み始めました。

 日本の情景が根底に流れる、けれどどこともいつとも知れない世界でのファンタジー。地に足の着いていないふわふわと夢心地であるだけのファンタジー小説は好きになれないのですが(ファンタジー=何でもあり、という考え方にも拒否反応が出ます)、だからこそ、骨太な世界観で、登場人物が生き生きとしているファンタジー小説は大好きです。私はハリー・ポッターシリーズがどうしても苦手で、児童文学としては主人公至上主義のような価値観は浅薄すぎると思えてしまうし、ファンタジー小説としてはあまりに設定に奥行きがなさすぎる。そんな私にとっては、対を成すように心地いい物語でした。
 洋物ファンタジーに疲れを感じてしまう人に、ぜひぜひおすすめしたい一冊です。