メモ
2007.07.05
「天上の青」は、2年以上前に上巻だけ読んでそのままになっていたもの。改めて読み直そうと思ったのはただ、「中途半端にしておくのもなんだから…」という程度の理由でした。
 けれど、特に気も入れずに読み進めていた下巻。その後半部分をほとんど埋めるふたりの往復書簡の、とりわけ最後のやりとりに、心深いところが動くのを感じました。とても久しぶりに、ただ純粋な涙を流したように思います。それぞれの最後の一通を、幾度も目線で追って読み返しました。

 2年前に上巻を読んでそれっきりになっていたのは、ただ記録をつけているだけのような文体に、ストーリー性を感じられなかったからです。けれど、すべて読み終えた今となっては、その理由もわかります。上巻から下巻の前半部分までは、ふたりの手紙のやりとりを成立させるために書かれた舞台設定に過ぎないとすら、私には感じられるのです。それほどまでに、ふたりの手紙のやりとりの存在感がすばらしいのです。
 だれかに自信を持ってすすめられる小説が、ひとつ、増えました。

 昨日「月光スイッチ」を買ってきました。今、もう半分ほど読み終えたところです。
 橋本さんの物語は、シンプルですね。さらさらとしていて、よどみなく、水よりも比重が軽い液体のようです。心地よいことにかけては天下一品、なのにやけに確固とした質感を感じる、読めば読むほど不思議な作家です。