メモ
2007.11.13
 ご無沙汰していました。
 「代表的日本人」にずいぶん時間をかけた後、ようやく「きみのためのバラ」を読みました。八つの短編が収められているのですが、そのひとつひとつを読み終えるごとに小休止を入れながら、ゆっくり読みました。そういう読み方をしたくなる雰囲気がありました。

 ひとつの人生のなかで決して消えることのない記憶をそっくりとりだして、それをただ正確に書き綴った本でした。どこにも無理やひずみのない、ただ書き綴っただけの本。それは、この本がひとつの事象やひとりの人物によって立っていない、ニュートラルで広い視線から書かれているからかもしれません。
 それぞれの物語は完璧に独立していて、だから“この本の感想”というのをうまくことばにすることができません。穏やかな冬の日の午後に読むのが一番似合うような、不思議なぬくもりのある本でした。
 物語が、ではないのですが、「20マイル四方で唯一のコーヒー豆」に登場した“彼”が、もっとも印象的な登場人物でした。

 おすすめ、ありがとうございました。池澤さんの書いた長編も、読んでみたくなりました。