メモ
2008.04.18
 「マジック・フォー・ビギナーズ」を読了しました。
 短編集というのは、もともと全体の感想というのは持ちにくい本の種類だと思っているのですが、そういう理由からではなく純粋に物語として、なんとも感想の持ちようのない本でした。

 常識以前の、生活していればごく自然に生まれてくるちょっとした認識。そこがひっくり返っている地点からまずスタートする、とても奇妙な物語。ファンタジーと呼ぶ気になれないのは、その世界においての不思議なことはなにも起きていないから、その世界における日常を書いているから。
 たぶん、ちょっと変わった小説を書こうと意識的に考えただけなら、認識をひっくり返す、という手法ひとつで充分だ。けれど、リンクはそこで満足しない。というよりも、奇妙な小説を書くことが目的ではないから、充分だという感覚を持たない。「マジック・フォー・ビギナーズ」を読んでいると、リンクは現実に小説内のような世界に住んでいて、書かれている事々はリンクにとってはごくありふれたものなのではないかという気がしてくる。
 多くのひとがためらう領域へ、なんの障害もないかとのごとく、ざくざくと踏み入っていく。そこに、さも自分の歩むべき道があるというみたいに。とても奇妙な小説家だ。好きかどうかと言われれば、好みの小説ではないのだけれど、なんとも、面白い本だ。現代にしか存在しない種類の奇妙さじゃないかと思う。

 自分から読むことはない本だったと思います。おすすめ、ありがとうございました。