メモ
2008.09.08
 「ゆくとし くるとし」を読了しました。おすすめ、ありがとうございました。

 だれもが落ちてしまう可能性を持っているちょっとしたささいな穴。そこに実際につまずいてしまう人がどれくらいいるのかわからないけれど、表題作の「ゆくとし くるとし」にも、同時収録の「僕らのパレード」にもそんな人々が登場する。ちなみに、私は自身もそういうひとりだと思っている。「ゆくとし くるとし」の語り手、トリコの言うことが私には少しだけ理解できる気がする。

 「ゆくとし くるとし」でも「僕らのパレード」でも、読後に残るものは「これでいいという肯定感」だと思う。幸せでも希望でもない。そんな大げさなものではなくて、今のままでいいのかもな、間違っててもそのときはそのときだ、と思える自分への肯定感。
 それは見方によっては開き直りかもしれないしお気楽思考かもしれないけれど、それは悪いことではないはずだ。深刻な顔で悩んだからといってなにが見えるわけでも、諦めて閉じこもったからといって平穏が手に入るわけでもない。
 人によってはそんなことあたり前じゃないの、と呆れ顔をするかもしれない。けれどそのあたり前に気づくことも、気づいてから心をオープンにして受け入れることも、難しい人には難しいのだと思う。その速度は、人によってばらばらだ。本当に、てんでばらばらだ。

 私は残念ながらそんな肯定感を手放しに自分のものにすることはまだできなくて、これからもしばらくの間ああだこうだと考え続けるのだと思う。けれど、それも含めて仕方ないよな、とは思っている。そういう自分のやり方は人に否定されやすくてしょっちゅうへこたれるけれど、こういう本に触れると、自分はその自分のやり方に納得していたのだということを思い出す。

 さて、推薦で本をまたおすすめしていただき、ありがとうございます。どちらも知らない作家さんです。
 買ったまま長いことほったらかしの本が溜まっているのでそちらもできるだけ読んで行きたいと思っていて、すぐには読み出せないかもしれません。気長にお待ちいただけるとうれしいです。とはいえ、それほど時間はかけないようにしようとは思っています。
 「ゆくとし くるとし」も、おすすめありがとうございました。