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『ソーシャル・ネットワーク』
The Social Network
制作:2010 年 アメリカ
監督:デビッド・フィンチャー
キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ / アンドリュー・ガーフィールド / ジャスティン・ティンバーレイク / ジョセフ・マッゼロ / ルーニー・マーラ / アーミー・ハマー
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 Facebook には興味がなかったけれど、予告編を観て主人公である Facebook 創設者マーク・ザッカーバーグのキャラクターに強烈に惹かれてしまった。本編を観てみて、ますます彼の人格に魅了された。
 エンディングロールの最後に「この映画は実話に基づいた創作である」という注意が流れる。あたり前だけれど、私が語るのは映画『ソーシャル・ネットワーク』の主人公であるマークについてで、現実のマーク・ザッカーバーグには関心がない。

 権利トラブルにより訴訟されたマークの原告とのやりとりと、Facebook の始まりが交互に映し出されてゆく。現在と数年前を交互に行き来して、 Facebook が産声をあげた瞬間から、100 万人のユーザーをかかえ、やがてマークとともに Facebook 創設にかかわったエドゥアルドにマークが訴訟を起こされるまでを描く。

 マークはコンピュータオタクで、人との会話のやりとりが下手で、自分のルールだけで動き、義理も礼儀も持たない。およそ付き合いを持ちたくないタイプの人間だ。そもそもの思考の仕方がふつうの人間とは違う。自分の理屈でしかものごとを考えない。
 それは、集団のなかでは生きて行けないことを指している。孤独に這いずっていくか、孤高にはばたいていくしかない。そしてマークには独創性と能力があり、周囲の誰をも失いながらも Facebook の CEO になった。

 マークは誰も省みず、ただ自分のアイディアを実現させることだけに全神経を集中させる。そこが私の好きなところだ。人間を必要としない人間というのは、間違いなく存在すると思う。
 エンディングシーンを観て、「結局彼だってひとを求めているじゃないか」と言うひとがいるかもしれないけれど、私はそうは捉えなかった。彼は「周囲に認めさせたい」だけであり、どこまで行ってもマークのなかには彼自身しかいない。
 「あなたはただ虚勢を張っているだけ」というような言葉が劇中でマークにかけられるけれど、この言葉は見事にマークの神経を上滑りしてゆく。たとえば彼が四十、五十になった頃に侘しさを感じる可能性はあるかもしれない。しかし才気走った二十代の若者にそんな感傷などありはしないのだ。

 私は情報工学系の大学に行き、ほんの少しだけプログラミングをかじった。そういう人間だからここまで楽しめた映画なのかもしれない、とは思う。
 オープニングで、マークが女の子の容姿を比較させてランク付けするサイト「フェイスマッシュ」を作っているシーンから私はもうこの映画に飲み込まれ、してやられてしまった。全体にスピード感があってテンポよく、音楽の使い方もうまく、退屈など一切なしに観終わってしまった。
 Facebook を知らないひと、普段それほどネットを使わないひとにはもしかしたらなにがなんだかわからない映画なのかもしれない。だから、誰にでも「観に行ってこい」とは言えない。けれどウェブサービスに熱狂した経験があるなら、ましてやウェブサービスの開発に関心を持っているなら、きっと心底楽しんで来れると思う。
2011.01.20