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『アンストッパブル』
Unstoppable
制作:2010 年 アメリカ
監督:トニー・スコット
キャスト:デンゼル・ワシントン / クリス・パイン / ロザリオ・ドーソン
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 ちょっとした気の緩みから起こる小さなミスが重なり、無人のまま走りだした 39 両編成の貨物列車。現実に起こった列車事故をモデルに、機関士と車掌のふたりが暴走列車に立ち向かう様を描く。

 人為ミスにより暴走した貨物列車に挑むのは、勤続 28 年のベテラン機関士・フランクと、コネで入社してまだ 4 ヶ月の新米車掌・ウィル。ふたりが初めてコンビを組んだまさにその日に、列車の暴走事故は起こった。
 フランクとウィルは互いに鼻持ちならないやつだと反目し合いながらぎくしゃくと普段の仕事をこなしていた。そこに全速力で走る暴走列車の知らせが入り、日常は一気に非常事態へと切り替わる。

 鉄道会社による列車停止作戦が失敗を続けるなか、フランクは独断で列車を止めるために動き出す。「会社のために命を投げ出すのか?」という電話を通しての本社の人間の問いに、「あんたらのためじゃない。ひとのためさ」と答えるフランクは最高に格好いい。
 対して、妻とのトラブルでわが子に会えない日々が続いているウィルは「巻き込まれて死ぬのはごめんだ!」とフランクの立てた作戦から降りようとする。
 自分の仕事に誇りと愛情を持っているフランクに対して、ウィルにとって仕事は「ひとまずやっつければ良いもの」に過ぎないのだ。
 この対照的なふたりの間に、暴走列車に立ち向かい、命を失う危険に直面した状況下で、揺るぎない信頼が生まれていく。

 小道具として使われる携帯電話の使い方もうまい。仕事をないがしろにした勤務中の通話、覚悟の瞬間にかけた一本の穏やかな電話、そして全神経を集中させた時には気づかない着信音。それぞれの電話が意味を持って、人間の橋渡しをしてドラマを構築している。

 ドキュメンタリーのような映像作りにまず引き込まれ、様々な構図で飽きさせない疾走する列車の重量感に圧され、人間の管理下にあるはずの列車が凶器と化したとき人が取れる手段のあまりの少なさに愕然としながら、全編息を呑んでスクリーンを注視していた。
 緊迫したシチュエーションと生々しいほどの迫力ある映像、ウェットにならない程度の人間ドラマ。スリルとアクションとドラマのバランスが絶妙な、堅実で良質なアクション映画。
 ひとつの列車暴走事故の始まりから終わりまでをひとつひとつきっちりと組み上げて、監督は見事に一本の映画として仕立ててしまった。
2011.01.27