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『戦争の常識』 鍛冶 俊樹
 本文中に「映画館で高校生達が大尉と少佐がどちらが偉いのか分からないらしいのを見て驚いた」というエピソードがある。この本はまさにこういった軍の基本を簡潔にまとめてある。なんとなくニュースや映画で耳にしている用語、目にしている兵器をあらかた説明してくれている。
 「国防の常識」「軍隊の常識」「兵隊の常識」「陸軍の常識」「海軍の常識」「空軍の常識」「現代戦の常識」「自衛隊の常識」と 8 つの章にわかれている。

 本文 200 ページほどの新書なのでひとつひとつの事物について深く掘り下げられてはいないが、その分網羅的で、今までなんとなく知っていた知識の整頓をおこない、曖昧にしていた部分を再確認することができる。
 ニュアンスだけで使ってきた用語の意味の違い(「防衛」は軍事的な意味合いが強く、「国防」は経済防衛、情報防衛などを含む。「安全保障」は戦時・平時の別なく常に行われるものである。など)も知ることができる。
 戦車と自走砲の違い、海軍艦艇の艦種の分け方など、ぱっと答えられない疑問に明解な答えが与えられる。

 「日本は戦争を放棄した」と言っても世界では現在も常に戦争・紛争が起こっているし、各国の軍事力のパワーバランスは政治に直接に影響する。核開発や紛争勃発のニュースを読んでもいまいちよくわからないというひと、軍・戦争というものをきちんと調べたことがないすべてのひとに読んでみて欲しい。
 ここに書いてあることは本来ならば社会常識としてこの世界に生きているすべての人間が共有しているべき知識なのだと思う。
 短いし、読みやすい。短時間で読みきることができるから、興味のあるなしに関係なく教養のひとつとして一読をすすめたい。
初版:2005 年 2 月 文春新書
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2013.02.16