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第16回 不忍ブックストリートの一箱古本市(4/27)
 4月27日(日)と5月3日(土)の二日間に開催された不忍ブックストリートの一箱古本市(公式サイト)に行ってきました。谷中、根津、千駄木(通称・谷根千〈やねせん〉)が舞台。谷根千のあちこちに一箱が現れるスポットがあり、すべてのスポットを回ってスタンプを集めるとプレゼントをもらえます。プレゼントを受け取れるスポットは古書ほうろう、往来堂書店、タナカホンヤの3箇所。この3箇所のいずれかを最後に回るようにルートを組み立てます。

 以下、頂いてきた本を中心に、不忍通りをふらふらと歩きまわった感想です。4月27日の開催スポットは13箇所、箱は56箱。私はタナカホンヤさんから回り始め、古書ほうろうさんをゴールにしました。

   * * *

タナカホンヤ
 千代田線根津駅で降り、まずはタナカホンヤさんへ。タナカホンヤさんは他のスポットから少し離れた立地なので、一箱古本市終わり頃は買った本で体がずっしり重くなるのでその状態で長距離を歩くのはちとつらく、最初に回ってしまうのが好き。
 タナカホンヤさんは古書店&ギャラリーで、シンプルな白壁の内装が本と展示物を引き立てるお店。

 店先に出された箱をのぞいた後、タナカホンヤさんの100円棚でカバーなしの『荒野へ』(クラカワー, 集英社文庫)を見つけた。『荒野へ』は既読の一冊だけど以前持っていたものは友人に贈って現在手元にないので即決。一度新刊で買った本は気兼ねなく古本で買えるのがいい(著者にきちんとお金を渡したいので、好きな作家の本は新刊で購入したい)。
 これは、この本が原作になっている『イントゥ・ザ・ワイルド』という映画から知った本で、私にとって映画も本もどちらもとても重要な作品。

 『見知らぬ街』(坂東眞砂子, 岩波書店)は、以前読んで印象的だったビジュアルブック『水族』(星野智幸)と同じCoffee Booksというレーベルだったので目にとまった。大人の絵本という感じのこのレーベルの装幀が好き。集めたくなる。

 児童書や絵本の並んだコーナーで『ふたりの老女』(ヴェルマ・ウォーリス, 草思社)という小説を。帯の背表紙部分に「アラスカに伝わる知恵と勇気の物語」とあり、同じくアラスカの荒野へ単身踏み入った青年のノンフィクション『荒野へ』を見つけていた流れで目にとまった。せっかく関心が向いたので、そのまま購入。
 アレックス・シアラーの『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』とか、老女・老婆が独力で立つ物語にはなぜか惹かれる(『13ヵ月と〜』は子供が魔法で老婆になってしまう話だけども)。

往来堂書店
 亡羊堂さんでまっさきに手に取ったのが『手で育てられた少年』。この一冊、去年の一箱古本市で気になったものの店主さんから「女性にすすめるのは、ちょっと」と言われ、くじけて購入を見送ってしまったもの。一年越しの購入。ちなみに去年は、亡羊堂さんでは『梅田地下オデッセイ』を頂いてきた。まだ積読ですが。
 あとから気がついたけど、この一冊は私にとって初めてのサンリオSF文庫だった。ちょっと感動。

喜多の園
 Book×Travel旅行会社さんでは『雀の手帖』(幸田文, 新潮文庫)を。知っている著者の本は古本では買わない、というのをなんとなくの指針にしているので購入は迷ったのだけど、手にとってぱらぱらとめくったら見開き1ページの随筆が並ぶこの本をどうにも読んでみたくなってしまった。幸田文さんは著作が多いぶんいざ読む機会を自分で探そうとした時に入り口に迷ってうまく見つけられなさそうだなあとも思い、手にとったこの機会にこの本を入り口にすることに。

貸はらっぱ音地+香隣舎
 ひょうたんぼさんの箱を物色し、いくつか気になる題名があったなかから『黒いハンカチ』(小沼丹, 創元推理文庫)を選ぶ。店主さん手製のスリップに初版が古い本ですよという旨のことが書いてあり、気になってめくっていたら店主さんに声をかけて頂いた。店主さんから直接話を聞くとたとえそれがほんの二言みことでも俄然気になってしまうのは、何度体験しても不思議。帯の北村薫さんの推薦文にも惹かれた。

 レプリコーンさんにて海野弘の『遊園都市』(冬樹社)を。海野弘さんは昨年12月のはやま一箱古本市で『室内の都市 36の部屋の物語』という本をタイトルに惹かれて購入し、今少しずつ少しずつ読み進めているところ。それがとても読みやすく知識にあふれ、けれど少しも衒学的ではなく、純粋に面白い。なので箱のなかに名前を見かけて思わず手に取った。
 とはいえ手に取りつつもまだ「既読の著者の本は新刊で」という自分ルールが…と迷っていたのだけど、本文1ページ目の書き出しに「萩原朔太郎は遊園地に〈るなぱあく〉というルビをふっている。」とあり、迷いがふっとびお買い上げ。
 最近の私は萩原朔太郎の名前を常に探している。『月に吠えらんねえ』(清家雪子, アフタヌーンKC)というコミックに大ハマりしていて、これが萩原朔太郎始め近代詩歌俳句の作品からキャラクターを作った(詩人たち本人ではない)というもの。登場人物みんなどろどろでぐちゃぐちゃなのにそのどろぐちゃがすべて作品の源泉であるという一点でもって肯定されるという、狂気が正義の一作。
 と、脇道にそれたけれど、その萩原朔太郎の名前が一番に飛び込んで来た本を元には戻せなかった。

 そして縁とは嬉しいもので、レプリコーンさんの斜向かいに箱が出されていた榊翆簾堂さんで『父・萩原朔太郎』(中公文庫)という萩原朔太郎の娘・萩原葉子さんの本を発見。「文士、芸術家とその家族や交遊を軸に、小説、随筆などを集めたいと思います。」という出店コメント通り、様々な作家・芸術家の家族の本が並んでいた。
 お会計をしながら「お店の名前、なんて読むんですか?」とお尋ねしたら、「さかきすいれんどう」という名前を教えてくれながら「天神さんで一箱古本市」という京都・長岡天満宮境内で開催される一箱古本市のちらしを下さった。こちらは榊翆簾堂さん主催の一箱古本市で、5月24日(土)に開催とのこと。こうやって遠地の一箱古本市を知ると、日本全国一箱古本市を追って旅行できるようなもろもろの力が欲しいなあと思う。

アートスペース・ゲント
 人見知りなので、自分から店主さんに声をかけられることはあんまりない。ということで、積極的に声をかけてくれる店主さんはありがたくて大好き。
 山羊屋さんで『死体絵画』というタイトルが気になって手に取り、スリップの価格を見たら「¥5000」の文字があって固まっていたら、「好きな値段でいいですよ」と声をかけてもらった。あれこれ話して、結果200円でもらってきた。オリジナルしおりを挟んでもらい、入浴剤のオマケももらいつつ、こういうゆるさが好きだなあとにやけてた。

花歩
 西荻窪の古本屋・西荻モンガ堂さんがお客さんと一緒に出店されているm&m書店さん。まず目にとまったのはロバート・キャパの『ちょっとピンぼけ』(文春文庫)。この本は一昨年に紀伊國屋書店が開催した本の書き出しだけで本を選ぶ「ほんのまくら」フェアで「もはや、朝になっても、起上る必要はまったくなかった。」という一文に惹かれて一度購入したことがある。読んでいる途中で友人に読ませてみたら気に入ったようだったのでそのまま贈り、読みかけのままにしていた。『荒野へ』といい、既読や読みかけの本が戻ってくる古本市になった気がする。

 既に知っている本を見つけたので、もう1冊何か知らない本を…と思い、『たるの中から生まれた話』(テオドル・シュトルム, 福武文庫)を手にとってみた。裏表紙に書かれたあらすじに「雨姫」という単語を見つけ、雨好きとしては読んでみたくなり、購入。『死体絵画』に続いて、これまでほとんど読んだことのないドイツ作家の本。

 そして、m&m書店さんではオマケで小さな動物フィギュアをもらえた。並んだなかから、白いイタチ? オコジョ? をセレクト。種類がよくわからないなりにぱっと「イタチかな?」と思ったのは、真っ白い毛に赤い目が『ガンバの冒険』に登場する残酷なイタチ・ノロイを思い出したから。
 ただ、ツイッターでモンガ堂店主さんがつぶやいていたフリーペーパーをもらい忘れて来たのが今回の失態のひとつ。残念。

 m&m書店さんのお隣しんや万象さんで箱を物色していたら店番をしていた店主さんに声をかけて頂き、しばし雑談。「どんな本買ったんですか?」と訊かれて、つい鞄から数冊取り出して話し込んでしまった。『遊園都市』を出したら「その人の本おもしろいですよね、知識の量がすごくて」と盛り上がり、つい「萩原朔太郎をモチーフにした漫画があるんですけどね、この本の最初に萩原朔太郎の名前があって…」としゃべり出してしまい、ちゃっかり『月に吠えらんねえ』の宣伝までして来た。読んでもらえて、気に入ってもらえてるといいなあ。
 ここではタイトルが気になって手に取り、表紙に惹かれた『虹の理論』(中沢新一, 新潮文庫)を「その人も知識があって面白いですよ」とおすすめしてもらい、購入。今回一番長居した箱になった。店主さんとのんびり話し込めたのは、花歩さんの車通り・人通りの少ない路地裏という立地のおかげもあったと思う。しんや万象さんがやってらっしゃる句会のリーフレットも頂いて、帰る道すがら読んできた。

戸野廣浩司記念劇場
 天気がよく太陽が燦々と降るこの日の不忍ブックストリートはとても気持ちがよかったけれど、大量の本を抱えて歩くとかなり汗をかき、そんななか日射しの入らない地下にあるこのスポットにほっとする。階段を降りていった先に去年来た時なでた虎の頭のぬいぐるみがあって、またぽんぽんとしてからスタンプを押してもらった。

 普段は客席であるスペースに並んだ箱のなかかから、黒猫リベルタン文庫さんで『啄木 ローマ字日記』(石川啄木, 岩波文庫)を購入。これもまた既読の1冊。3年前に藤原竜也さんの舞台を観てみたくて三谷幸喜監督の『ろくでなし啄木』という演劇を観に行った。その時「啄木の『ローマ字日記』を読んでから観劇に来た方にはサプライズがあるかもしれません」というイベントがあり、せっかくならと読んで行った。ただこの本は品切れになっていたために書店で入手できず、図書館で借りたために手元にない。
 『月に吠えらんねえ』には啄木も登場するので、その後押しもあり迷いなくささっと購入。
 
 興味を惹かれる本が並ぶ嫌記箱さんから、どこかで話題になっていたなと『根津権現裏』(藤澤清造, 新潮文庫)を手にし、面白いかなあ、どうかなあ、でも気になるものなあと書き出しの数行を読んで『鹽壺の匙』(車谷長吉, 新潮文庫)を選び、丸谷才一の訳というところと表紙のあらすじで孤独な娘という文字列に振られた「ミス・ロンリーハーツ」というルビとに惹かれ、岩波文庫ならまあ大間違いはないだろうと『孤独な娘』(ナサニエル・ウェスト, 岩波文庫)を決め、3冊まとめて店主さんに差し出したら「渋い小説が好きなんですね」と笑われた。「気になるものを選ぶとなぜかこうなるんですよね!」とこちらも思わず笑って、楽しくお買い上げ。
 嫌記箱さんでは昨年も2冊買わせて頂いていて、続けて欲しい本が見つかると相性のいい箱なんだなあという感じがしてこっそり嬉しくなる。

 カンツメ文庫さんでは『黄色い娼婦』(森 万紀子, 文藝春秋)を選ぶ。「娼婦」という言葉に惹かれるのはどういう理屈なのか、自分でもよくわからない。でもとにかく、タイトルで手に取り、書き出しの数行で「続きを読みたい」と思わされたので購入。
 硬質で、傍観的で、しかし決して冷笑的ではない文章が好きで、小説でも随筆でもノンフィクションでも、そういう文章に出会うとその本を自分のものにしてしまう。そういう本を買った時の状況は、よほど印象的な事件がない限りはあんまり覚えていない。本のことしか考えていない状態になってるんだと思う。

旧安田楠雄邸
 ビレッジプレスさんでは『目まいのする散歩』(武田 泰淳, 中公文庫)。「目まい」も「散歩」もまた好きなキーワード。これもまた書き出しと、さらに裏表紙のあらすじの「近隣への散歩、ソビエトへの散歩が、いつしかただ単なる散歩でなくなり、時空を超えて読む者の胸中深く入りこみ、存在とは何かを問いかける。」という一文に惹かれた。
 かくいう自分は、散歩が苦手。一箱古本市みたいに目的地のある歩行は2、3時間ぶっ続けても苦痛ないけれど、目的なく歩くというのができない。そういうあこがれが「散歩」という言葉を常に気にかかるものにさせてるんだと思う。

 あと、本を買わせて頂いてはいないけれど、三秀舎ブックスさんの箱をのぞいていたら栞をくださった。何種類もあるなかからじっくり物色して一枚頂いて来た。

千駄木の郷
 去年観た映画『世界が食べられなくなる日』や『よみがえりのレシピ』を観てから、食べ物を育てるということを折にふれて考えるようになった。くものす洞さんの箱のなかは気になるキーワードが多かった。そのなかで『土と生きる 循環農場から』(小泉 英政, 岩波新書)がひときわ目にとまったのは、そういう下地があったから。新書は玉石混交のなかから玉を選ぶのが難しいと感じているので、こういう機会にピンとものに出会えるのはありがたい。

 ぼちぼち堂さんで見つけた『夜鳥』(モーリス・ルヴェル, 創元推理文庫)は、あらすじで「短篇作家」に「コントロール」というルビが振られているのが一度も見たことのない言い回しで気にとまった。帯の「探偵趣味と怪奇趣味の融合」というフレーズも。
 探偵趣味も怪奇趣味もがっつりハマり込むほどの熱意はなく、でもいつだって気にはかかる、ちょっと特別な位置にある。それは、子供時代に児童作家はやみねかおるさんのミステリー小説に触れて育ったせいだと思う。
 ということで、1冊でその両方に触れられるならおとく! というちょっとよこしまな気持ちもあって購入。
 オリジナルブックマークをつけて頂いた。

 お隣の石巻 まちの本棚さんでは、タイトルと装幀で『星座から見た地球』(福永 信, 新潮社)を手に取った。高校時代に天文部に入っていたこともあって星のかかわる物語やタイトルには問答無用に惹かれる。
 そして、これはどう言葉にしたらいい感覚なのかわからないけれど、最初の1ページで「このなかにはちゃんと物語がある」という感じがして、その続きを読みたくなって持ち帰って来た。

 そして、平積みにされた冊子『いしのまき浜日和』も頂いて来た。ツイッターで石巻のまちの本棚の存在を知り、この一箱古本市で少しだけその端っこにふれることができたのは嬉しかった。いつか石巻の地にも訪れてみたいなと思う。
 石巻VOICEというフリーペーパーも下さった。

 千駄木の郷で最後に買ったのは、一度石巻 まちの本棚さんに進んだ後もまだぼちぼち堂さんの箱のなかで気になっていた『愚か者』(車谷長吉, 角川書店)。千駄木の郷は13スポット中12スポット目で体がなかなか疲れていて箱入りのこの本を手に取る気力が湧かず一度は見送ったのだけど「いや、このまま帰ったら後悔する」と思い直してぼちぼち堂さんに舞い戻った。
 家に帰ってから本を整理していて気がついたのだけど、この日は嫌記箱さんで買った『鹽壺の匙』と合わせて車谷長吉さんの本を2冊買っていた。まったく知らない作家なのに、古本を探していると時々こういうことがある。

古書ほうろう
 ようやくたどり着いた最後のスポット、古書ほうろうさん。最後のスタンプを押してもらって、景品の不忍ブックストリートオリジナルのノートを頂いた。

 ほうろうさん前に並んだ箱のうち、マキ文庫さんで見つけたのは『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』(石井 好子, 暮しの手帖社)。この本との縁は、去年の不忍一箱古本市で文庫版と出会ったのが始まり。その時は「これは新刊で買おうかな」と思って見送り、けれどそれを後日後悔し、以来何度か書店で見かけることはあったもののなかなか買うところまではいかずにいた。なにをためらって買わずにいるのか自分でもわからなかったけれど、今回マキ文庫さんで単行本版を見つけて「あ、この版がいいな」と思い、ほとんど何も考えずに購入。こういう、会って初めて自分が欲しがっていたものを知る巡り合いは不思議なものだなあと思う。

 そしてもう1冊、『終電にはかえします』(雨隠ギド, ひらり、コミックス)という百合コミック。ぱらっとめくった絵柄がかわいくて、かわいい女の子と女の子が仲良くしてる画面に癒されたくて、ほとんど反射的に『東京の空の下〜』と合わせて店主さんに差し出していた。

 古書わたるさんでは、まず最近探していた『オフシーズン』(ジャック・ケッチャム, 扶桑社ミステリー)をほとんど反射で手にとった。『隣の家の少女』は既読なので「知っている著者の本は古本では買わない」という指針には反するけれど、新刊書店何店かで探していたもののなかなか在庫になくしびれを切らしていたタイミングだったので、思わず。

 もう1冊に『冬の夜ひとりの旅人が』(イタロ・カルヴィーノ, ちくま文庫)。本文1ページ目をめくったら「あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている。さあ、くつろいで。精神を集中して。余計な考えはすっかり遠ざけて。」と始まっていて、この奇妙な手法の小説を読んでみたくなり、購入。

 そして、今回の一箱古本市最後の1冊は紫哲文庫さんで購入した『南の島に雪が降る』(加東 大介, 旺文社文庫)。1943年、ニューギニア戦線で兵たちを鼓舞するためにつくられた劇団と舞台のノンフィクション。戦争と舞台という、まったく別ベクトルではあるけれどどちらも私にとって関心の深い要素が思わぬ結びつきをしているのを目前にして、読んでみたくなった。

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 すべての箱を周り終えたのは一箱古本市終了時刻目前でした。すぐ谷根千を離れるのは名残惜しく、どこかで座ってコーヒーでも飲みたいなとお店を探しました。不忍ストリートマップを手に気になる店名を探し、まずは檸檬の実さんへ。行ってはみたものの中はひっそりとしていて、そもそもお茶をするというよりごはんを食べるお店だなと思い、5月3日開催の一箱古本市二日目にはここでお昼ごはんを食べよう、と心に決めて不忍通りに戻りました。

 檸檬の実さんからもすぐの千駄木駅近くのやなか珈琲でコーヒーを頼み、のんびり『終電にはかえします』を読んで、12時から16時まで歩き回って目減りした体力を回復。

 買い込んだ本を背負いながら、次に往来堂書店さんまで戻りました。昨年一箱古本市に来た時にはあまりゆっくり見られなかったので、この地域から愛される書店さんをのぞいてみたくて。とはいえ、すっかり古本脳になってしまった状態で新刊書店さんを見るのは思いのほか難しく、結局あまりきちんと見られずに終わってしまいました。いつかまた行かねばなりません。
 それでも、最近始めた書皮集めのこともあって何か1冊文庫本が欲しいなと思い、この日いくつかの箱で単行本版の方を見かけた『雪の練習生』(多和田 葉子, 新潮文庫)を買ってきました。
 そして、レジに並んでいる間にパンが売られているのを見つけ「あっ」と。往来堂さんのツイッターアカウントで見かけていた「ミニレモンのパンやお惣菜」ってさっき行った檸檬の実さんのことだ! と遅まきながら気がつき、レジ待ちの間にそそくさと物色。赤い赤い実のパンとフルーツパンをセレクト。持ち帰り、翌日の朝ごはんにしました。このふたつどちらも美味しかったんですが、酸っぱいものが好きな私はすぐりとクランベリーが入った赤い赤い実のパンがびっくりするほど好きな味でした。酸っぱいだけなら市販のお菓子にもいろいろあるけれど、酸っぱくてなおかつちゃんと美味しいものって、実は少ない気がしています。
 
 往来堂さんから根津駅へ向かいつつ、何か甘味が食べたいなあと舌が要求を始め、不忍ストリートマップをさらにみつめて芋甚さんへ。バニラアイスと小倉アイスが乗ったアベックみつまめを食べて、ようやく根津駅から帰途につきました。
2014.05.06