2005 年 ドイツ 117 分
原題:Sophie Scholl - Die letzten Tage
監督:マルク・ローテムント
キャスト:ユリア・イェンチ / アレクサンダー・ヘルト / ファビアン・ビンヌリフス
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1943 年、ナチス政権下のドイツで反ナチのビラをまいたゾフィー・ショルはゲシュタポに逮捕された。
ゾフィーは実在の女性だ。冒頭のテロップによれば、「90 年代に新たに出た証言と資料に基づいて作られている」とのこと。
ゾフィーが友人とほほえみながらレコードを聴く場面から始まり、ビラの作成、大学でのばらまき、そして逮捕、尋問、裁判と、シーンは粛々と進んでゆく。娯楽性はない。映像作品というよりも、再現映像として価値の高い映画だと思う。
ゾフィーは幾度も「信念」「良心」「愛」「神」という言葉を繰り返す。神への祈りを支えに人類を愛し、良心に悖ることない行動を選び信念を一度として曲げなかった。
ナチス政権下において「声を上げる」というのはどれほど危険なことか、想像は決して追いつかない。それを成し遂げたゾフィーの勇敢さと強靭さに、感嘆の声を上げざるをえない。
狂った世界でおもねるということを知らない姿は無謀でもある。それは 21 歳という若さが持つ無謀さでもあっただろうとも思う。けれどその無謀さは決して間違った方向には向かっていなかった。その正しさが眩しい。
印象的だったことなのだけど、作中ではゲシュタポの取調官や牢の看守などがゾフィーに対して優しさをのぞかせる。ナチス=絶対悪とは描かれていない。ナチスを信じヒトラーに救われた人々にとってゾフィーは愚かで夢見がちな少女に見えたことだろう。感情的にナチスのすべてを悪としそれを解決とするのでなく、そういうナチスに関わる人々の様子が端々で描かれている。そこにもこの映画の誠実さを感じた。
ゾフィーが処刑された日、彼女の兄とその友人も処刑されている。その後も彼らの仲間の多くが厳罰に処されている。70 年前の事実のひとつとして、知っておいていい映画だと思う。
自分がドイツ語を理解できないことが悔やまれてならない映画だった。ゾフィーと取調官の会話を中心に、この映画の政治的要素を理解するには字幕などではとても追いつかない。