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『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』 ジュリア・キャメロン
原題:The Artist's Way
翻訳:菅 靖彦
初版:2001 年 4 月 サンマーク出版
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 私が下手な小説を書き始めてから、もう十年以上が過ぎた。
 この本は「創造的な人生を送りたいと思いながらも踏み出せずにいるひと」に向けたワークアウトの手引きだ。私がこの本の正統な対象者かといえば、あまりそうとは思えない。
 “創造的”という豊かな印象のある言葉を自らに用いるのは腰が引けるけれど、ひとまず自分が「作る」人間であるということに疑問を感じることはない。この本のなかに描かれている「何かを作りたくても作ることができないでいる人々」に、私は当てはまりはしないと思う。

 けれど、何かしらの作品を作ってはいてもその人が著者の言う「自分の創造性を育んでいる人間」であるとは限らない。この本を読みながら、自分はちょうど「作品を作ってはいるけれどさまざまな落とし穴にはまり込んでいる人間」だと感じていた。
 本文中に登場する創造的になれずにいる人々の「自分のやりたいことから目を背ける」「常識的であるために自分のやりたいことを我慢する」といった生き方は果てしなく縁遠いものだ。しかし同時に、「創造的であろうとする時人々が本当に恐れているのは『失敗すること』ではなく『成功すること』」「名声という精神的な麻薬に冒されると作品の出来よりも他人にどう見られるかを気にするようになる」「広大な可能性に怯え、自分の創造性を妨害する手段をあえて選択しようとする」といったあたりにははっとさせられた。
 書くことを避けている自分や、書いていても楽しくない自分が確かにいる。そんな時、自分が根っこの部分で何を感じていたのかを、はっきりと示されたと思う。

 この本には創造的になるための 12 週間のワークコースが掲載されている。この 3 ヶ月のコースをきちんとこなそうというほどの熱意は私にはない。けれど、なかには私が今までにやったことのあるもの、継続的にではないにしろ今もやっていることがいくつかあって、そこから自分が得たものを鑑み、このコースをやり遂げたとしらその先には確かに豊かな変化が起こっているだろうとも確信できる。
 創作というものにひるんでいる、あるいはひるんでいる自分にすら気づいていないひとに、このプログラムはきっと意義のあるものだと思う。
2011.08.21