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『続 名画を見る眼』 高階 秀爾
 『名画を見る眼』が素晴らしかったので、続編も読んでみた。以下に、今回解説された 14 作品を挙げる。

 モネ「パラソルをさす女」(1886 年)
 ルノワール「ピアノの前の少女たち」(1892 年)
 セザンヌ「温室のなかのセザンヌ夫人」(1880 年)
 ヴァン・ゴッホ「アルルの寝室」(1889 年)
 ゴーガン「イア・オラナ・マリア」(1891 年)
 スーラ「グランド・ジャット島の夏の日曜日の午後」(1886 年)
 ロートレック「ムーラン・ルージュのポスター」(1891 年)
 ルソー「眠るジプシー女」(1897 年)
 ムンク「叫び」(1893 年)
 マティス「大きな赤い室内」(1948 年)
 ピカソ「アヴィニョンの娘たち」(1907 年)
 シャガール「私と村」(1911 年)
 カンディンスキー「印象・第 3 番」(1908 年)
 モンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」(1942-43 年)

 前巻と同じく豊かで明瞭な語り口で、一見しただけでは気づけない絵の画面に描かれているがことが語られている。補色効果の使われ方や、無造作に描かれたように見える線が描く平行や垂直の調和が示される。
 感動するのに技法への理解は要らないのかもしれない。けれどやはり、画家が何を知り、何を学び、何を見て何を描こうとしたのか、そしてそのためにどのような努力をして芸術に対するどのような理念を持っていたのか、それらを知ることは絵への感動を確実に深めてくれる。

 興味深いのは、前巻が 1434 年から 1863 年という 430 年にわたる作品群について書かれているのに対し、今回は 1880 年から 1948 年というたった 68 年の間に生まれた作品だということだ。
 このことには著者も言及していて、カンディンスキーやモンドリアンといった抽象画家が生まれるに至るまでの近代絵画の歴史を明確にしたかったと述べている。そのためか、章ごとに読み切りの感が深かった前巻よりも各章の関連が深く、歴史の流れを読み取ることができる。画家同士、そして画家の周囲を取り巻く批評家や詩人たちが画家に与えた影響が取り上げられ、この一世紀あまりの間に絵画の世界がいかに変化し、発展してきたかが見えてくる。
 前巻と同じ感動を味わいながら、さらに近代絵画の足跡をおおまかながらもたどることのできる喜びがあった。特に抽象画というのはその背景を知らずに見ても理解するのがとても難しいもので、カンディンスキーとモンドリアンがそれぞれ何を見て何に影響を受け、そして絵画の世界に何を求めたのか、それを知ることができたのはとても有意義なことだった。
初版:1971 年 5 月 岩波新書
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2012.10.28