メモ
2007.09.04
「クレィドゥ・ザ・スカイ」をおすすめいただき、ありがとうございます。お礼が遅くなって申し訳ないです。
 ただ、せっかくおすすめいただいたのですが、「クレィドゥ・ザ・スカイ」は6月のメモにも書いたとおり、本棚でじっと寝かせているところなんです。3ヶ月近くも経って時間のかかる話だとは思いますが、スカイ・クロラシリーズはとても大切な存在なので、自分が読もうと思えたタイミングで読み始めたいと思っています。おすすめ、ありがとうございます。

 ところで、「柔らかな頬」を読んでいます。…うーん、不思議なほどページが進みません。けっしてつまらないわけではないのですが、文体と相性が悪いのかもしれません。一度読み終えたら、いつかきちんと再読したくなる気がします。
2007.08.25
 ここ三日間をつかって、「邂逅の森」を読了しました。直木賞を受賞するのは底力のある作品が多いですが、それにしてもがっしりとした骨太な小説で、なんとも心地よい世界を見せてもらいました。大正から昭和にかけてを、マタギと名乗る狩人として生きたひとりの男の半生です。決して実体験はできない人生を垣間見られる、小説の最たる面白みのひとつを心から感じました。

 ひとことやふたことで説明できる内容ではないので、この空気を感じるためにはなにしろ読んでください、と言うしかない。しかしそのなかでも私が心底気に入ってしまったのは、主人公である富治と、彼がかつて愛し合った女性である文枝が再会したシーン。たぶんこの場面は、女性が書くととてもうすっぺらくなってしまうのではないかと思う。あの流れを男性が書くからこそ、ふたりの心の動きの機微も、なんとも言えないあの面白みも、はっきりと表れるのだ。
2007.08.21
「ぼくのメジャースプーン」を、読み終えました。おすすめ、ありがとうございました。
 必死になって、読み進めていました。“面白い”という感想は、物語を楽しむ余裕があるからこそでてくる言葉なのだと痛感しました。小学四年生の「ぼく」という一人称で物語が進むからでしょうか。切実で、痛ましくて、けれど強くて、“面白い”と感じる余裕もなく、ただ必死で読み進めていました。

「ぼく」が直面した現実は、とても厳しい。幼い心は一途すぎて、その現実をやり過ごすこともあいまいにしてしまうこともできない。「ぼく」が自分自身でけじめをつける方法を模索する、その七日間の物語。そのけじめの方法は、彼なりの罰のかたちを見つけること。そして、自らその罰を与えること。

 彼の模索の方法も、出された結論も、すべてひっくるめて彼の罰のかたちはとても痛々しい。そんな風に考えないでと、懇願すらしてしまいそうになる。
 けれど、自分に対して厳しすぎるそんな彼も、彼が敬愛している彼女も、きっと救われるだろう。彼は彼女を救おうとしたけれど、人は救うばかりではない。自分が救おうとした人にこそ救われるなんてことは、ままあることだ。

 懸命な「ぼく」が過ごした、現実を見つめてとらえて、けじめのかたちを見つける七日間。彼が出した答えを、私は正しいとは思わないけれど、それでもこの七日間が彼にとってかけがえなく貴重なものになるだろうことは、うれしく思う。
2007.08.18
「幽霊人命救助隊」を読みました。書店で平積みにされていて、ポップの文面に惹かれて読んでみたもの。いやはや…面白かった。読む前の予測値を軽々と飛び越える面白さ。思わぬときにこんな小説にぽろっと出会ってしまうから、本を読むのはやめられない。

 ばらばらの年代に自殺した4人が、天国へ行くために神様からつきつけられた条件。それは、7週間のうちに100人の自殺者を救えというもの。神様から与えられた道具を使い、あれやこれやの方法で、4人は自殺者を救っていく。

 あらすじは、たぶんこれで充分だろう。荒唐無稽かもしれないが、とてもシンプルだ。このシンプルな筋立てだからこそ、描かれる自殺者ひとりひとりに存分に焦点をあてられる。
 言い忘れてはならないのは、この小説は重苦しくないということ。自殺というテーマを扱おうとすると、とにかくリアル性にこだわって、読むだけでしんどい作品になりがちだ。でも、この小説はそうじゃない。自殺に対して決して軽々しく向き合っているわけではないのに、読者に余計な負担をかけさせない。重いテーマをきちんと扱いながら重々しく書かない。なんて理想の作品像だろう。

 ちなみに、読後にアマゾンで高野さんの名前を検索してみたら、「13階段」を書いていて心底びっくりした。「13階段」は出版されたときからずーっと気にしている小説で、今の読みたい本リストの中にもきちんと書いてある。なのに、「幽霊人命救助隊」が「13階段」の作者だとはちっとも気づかなかった。「幽霊人命救助隊」は衝動買いだったから作者名なんてろくに見ていなかったし、「13階段」にしてもタイトルのインパクトにばかり目が行っていて、作者名を覚えていなかった。
 いやはや、思わぬところでつながってしまったことにびっくり。
2007.08.15
「ぼくのメジャースプーン」をおすすめいただき、ありがとうございました。辻村深月は実は最近気になっている作家さんで、「冷たい校舎の時は止まる」や「スロウハイツの神様」が目に留まっていたところでした。すばらしいタイミングによろこびつつ、あさってくらいには書店に出向けるかなと思います。今日明日はバイトで身動きがとれません…。
 おすすめ、ありがとうございます。楽しみに読みますね。

 ちなみに今は、筒井康隆の「佇む人」を読んでいるところです。筒井さんってずっと気になってたんですが…なるほど、こういう話を書く人なんですね。竹本健治をちょっと思いだしますが、私の好みは竹本さんに近いかもしれません。