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ピックアップ10冊 2010年
2010 年に読んだ本のなかから特に印象的だったものを 10 冊ピックアップしてみました。
明確な順位をつけたわけではありませんが、ざっくりと上の方がより面白かったものです。
番号が ピンクのものは小説緑のものは小説以外 です。

01』 皆川 博子
短編集。この世ならざる世界と現実とが垣根を失い混じり合う幻想小説。最初に読んだ時はあまりのつまらなさに耐え切られず読むことを放棄して、数ヶ月後に読み直したら今度は面白さに飲み込まれるようにして読了した。
02『非線形科学』 蔵本 由紀
科学系の本でこんなに面白かった新書は他にない。物事の真理を知る、知的好奇心を満たすという純粋な楽しさを存分に味わった。ただ、学生時代に理科系科目が嫌いだったというひとが読むにはちょっとつらいかもしれない。
03『読書について 他二篇』 ショウペンハウエル
「読書とは他人にものを考えてもらうことである。1 日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく。」表紙にも引かれた本文より。薄いし読みやすい。本を読むひとはとにかくまず一読を勧めたい。
04『天使の囀り』 貴志 祐介
アマゾンへ調査に行った人々が次々に奇妙な死を遂げてゆき、主人公はその真相を追ってゆく。さすがの描写力で描かれるホラー。ぐいぐい読ませてくれる。この作品で知った様々な生物の存在は、恐ろしくも蠱惑的。
05『玩具修理者』 小林 泰三
ホラーでありオカルトでもある。同収録の「酔歩する男」はさらに SF でもある。グロテスクな描写が遠慮なく展開されるので苦手なひとは読めないだろうけど、頭の中を丸ごと作品に侵食されるようなおぞましさと面白さがあった。
06『都会のトム&ソーヤ(1)』 はやみね かおる
頭は良いのに猪突猛進の創也と自称平凡な中学生の内人。ビル街を舞台に展開するふたりの冒険物語。夢水シリーズからずっと親しんできたはやみね作品のなかでも、一番面白く口角の下がる隙がなかった一冊。シリーズ続巻あり。
07『忘れられた日本人』 宮本 常一
西日本を中心に、著者が歩いて聞き集めた地域の人々の声や姿が集められている。かつて日本に生きた人々の民俗が垣間見える。興奮せずかといって冷めもせず、心地良い距離感で著者が自分の興味に忠実に書いているのがわかる。
08『日本人の英語』 マーク・ピーターセン
日本人が間違えがちな英語やネイティブの人々が自然と使い分けている言い回しなどがまとめられている良書。英語を勉強しているひとはぜひ手元に置いて折に触れて読んでみるといいと思う。また単純に読みものとしても面白い。
09『江戸川乱歩傑作選』 江戸川 乱歩
「芋虫」という短編が読みたくて買ったのだけど、「鏡地獄」という一編が印象的だった。直截的な恐怖ではなく、自分の足元がじわじわと透けてゆくような、隠微で目眩を起こさせる恐ろしさがあった。
10エディプスの恋人』 筒井 康隆
七瀬三部作の三作目。超能力者の七瀬が、今作では宇宙そのものとすら言える存在と対峙する。最も観念的で、物語としては救いがなく、そしてだからこそいつまでも記憶に残ってゆく小説だった。
2011.06.01