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ピックアップ10本 2014年
2013年に観た映画のなかから特に印象的だったものを10本ピックアップしました。
明確な順位付けをしたわけではありませんが、上の方がより存在の大きな映画です。
番号が ピンク のものはフィクション、 のものはドキュメンタリーです。

01『スプリング・フィーバー』
ゲイの男三人を軸に紡がれ、途切れ、しかし果てなく描かれる鬱屈した世界。監督の人間を見つめる視線の容赦のなさに戦慄し、しかし期待したり希望を背負わせようとしないことは優しさであるとも感じる。
02『パリ、ただよう花』
恋人を追って北京からパリへ来た中国人女性の花。恋人に振られ、行きずりの男とレイプまがいのセックスをし、そのままその男と恋人同士になる。愛に飢えながらあまりに容易く体を明け渡して愛をぶち壊す。彷徨する花はどこにも辿り着かないまま映画は終わる。
03『チョコレートドーナツ』
1979年のカリフォルニア、ダウン症の少年マルコとゲイカップルのルディとポールが出会う。それぞれに欠けたものをお互いが慈愛をもって埋め合う三人の関係が優しく、そして時代がもたらす残酷な結末に胸がえぐられる。監督来日のタイミングで映画館に足を運べた幸運にも恵まれた。
04ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2
ニンフォマニアのジョーの生涯を八章に分けて綴じ込んだ前後編の映画。コミカルで、滑稽で、憐れむにはあまりに愚かなジョーの生涯。そして、そんなジョーをどう見るかは、観客の自分自身への態度の写し鏡でもある。
05『思い出のマーニー』
ぜんそくの治療のため海辺の町へやってきた少女・アンナ。アンナはその町で不思議な少女マーニーと出会い、交流を重ねてゆく。子供時代のあまりに多感で息の詰まる頃が優しくやわらかく描かれている。
06『聖者たちの食卓』
毎日十万食のカレーが作られ、訪れる人々に無償で振る舞われるインドの黄金寺院。その一日を映したドキュメンタリー。階級も宗教も人種を関係なく皆で床に座って食べる食堂、調理や給仕はすべてボランティアのシク教信者によって進行する。途方もないスケールに頭をくらくらとさせ、混沌として見えるのに実は整然と働く人々の純粋なうつくしさに価値観を揺さぶられた。
07『自由と壁とヒップホップ』
パレスチナのヒップホップアーティストを追うドキュメンタリー。差別、占領、貧困。イスラエル領内で生まれた、自分たちの抑圧された現状を語る言葉を音楽で伝える若いアーティストたち。分離壁によって隔てられ同じステージでライブをすることさえ困難な状況で、人々に言葉を伝え続ける彼ら。
08『インターステラー』
桁外れに壮大な映像で描かれる近未来SF。ストーリーがどうこうはもはやほとんど意味がなく、ノーラン監督が映像にするその圧倒的な世界観に純粋に浸る。うつくしいもの、大きなものは、もうただそれだけで単純に胸を打つ。
09『マージナル=ジャカルタ・パンク 2014年春版』
インドネシアで貧困の底からパンク音楽で人々に政治を伝えようとするバンド・マージナル。ストリートチルドレンの支援も行いながら、経験を共有することで人々の選択肢を増やそうとする。上映後来日したメンバーのミニライブも聴けた。
10ゼロ・グラビティ
3D映像の魅力をうまく引き出した佳作。宇宙事故に遭い地球への帰還を目指すひとりの宇宙飛行士を静かに追う。ストーリーでなく映像が映画一本を牽引するのを見て、これからさらに映画の幅が広がっていくことを実感させてくれた。

 『ニンフォマニアック Vol.1/Vol.2』を一本の映画としてカウントすると、2014年は30本の映画を観ました。月2.5本、仕事が忙しくなったなか多くはないけれど決して悪くもない、とかろうじて自己弁護できる数字かなと思います。

 トップ2を占めたのはロウ・イエ監督の作品で、この監督と出会えたことが2014年最大の収獲でした。ひりつくようでいて、現実的過ぎて絶望することさえできない、引き込まれる映画を撮る監督だと思います。新作の『二重生活』も観に行きたいところです。

 2013年に続いて、ドキュメンタリーを観、渋谷アップリンクに通う年でした。新しいジャンルを開拓するという感じはなく、むしろ「観たい」と思いつつ映画館へ足を運ぶ時間を捻出できない年であったなと思います。今年はどうにか……と言いたいところですが、正直なところ目処は立ちません。

 上に挙げた以外に印象深かった映画としては、『Call Me Kuchu』、『LIFE!』、『ジャージー・ボーイズ』、『ダブリンの時計職人』など。
 2014年は忙しさのために大手シネコンに偏りがちな年でしたが、2015年はできればもう少し小さな映画館にも出かけていけると良いなと思います。
2015.02.21