メモ
2008.04.18
 「マジック・フォー・ビギナーズ」を読了しました。
 短編集というのは、もともと全体の感想というのは持ちにくい本の種類だと思っているのですが、そういう理由からではなく純粋に物語として、なんとも感想の持ちようのない本でした。

 常識以前の、生活していればごく自然に生まれてくるちょっとした認識。そこがひっくり返っている地点からまずスタートする、とても奇妙な物語。ファンタジーと呼ぶ気になれないのは、その世界においての不思議なことはなにも起きていないから、その世界における日常を書いているから。
 たぶん、ちょっと変わった小説を書こうと意識的に考えただけなら、認識をひっくり返す、という手法ひとつで充分だ。けれど、リンクはそこで満足しない。というよりも、奇妙な小説を書くことが目的ではないから、充分だという感覚を持たない。「マジック・フォー・ビギナーズ」を読んでいると、リンクは現実に小説内のような世界に住んでいて、書かれている事々はリンクにとってはごくありふれたものなのではないかという気がしてくる。
 多くのひとがためらう領域へ、なんの障害もないかとのごとく、ざくざくと踏み入っていく。そこに、さも自分の歩むべき道があるというみたいに。とても奇妙な小説家だ。好きかどうかと言われれば、好みの小説ではないのだけれど、なんとも、面白い本だ。現代にしか存在しない種類の奇妙さじゃないかと思う。

 自分から読むことはない本だったと思います。おすすめ、ありがとうございました。
2008.04.14
 「マジック・フォー・ビギナーズ」の持っているものをどうにか言葉にしてみたいのだけど、なかなかたどりつきません。

 現実における非現実であるはずのものを、現実とフラットにつながっているかのように描写されてしまうことが、たぶんこのズレた感じの原因なのだと思う。
 ケリー・リンクは、雨が降り出したのでだれもが傘を開いた、と言うのと同じ流れで、猫の皮を剥ぐとなかには王子がいた、と言い出す。翻訳という幕越しだから非現実感が薄れてしまっている、という可能性も考えたけど、たぶんそうじゃない。リンクには、あたまっから、現実を書こうという意思がない。なんの疑いもなく、非現実を書くことだけが、唯一とうぜんの行為だと感じてるんじゃないかと思う。
 作者のそんな意識がにじみだして、あまりにも現実くさい非現実が、展開されていくのかもしれない。
2008.04.12
 9日に、「ICO」を読了しました。
 正直なところ、宮部さんのファンタジー小説の文体が私はあまり得意ではなくて、思ったよりもずっと時間をかけてしまいました。恩田陸さんや市川拓司さんもおなじ感じ。呼吸が合わないというのか、どうも読み進めるのに時間がかかってしまいます。

 私は原作にもっとも興味をひかれるたちで、「ICO」に関していえば、自分がゲームをするならまずゲームをやってみたかったな、というのが正直なところです。
 小説に関しては、エンディングでヨルダがいかだを押し出すシーンが、もっとも印象的です。ゲームが元だという意識がつよかったからか、普段よりもずっと、文章が映像として動いていました。小説を映像化しながら読む、という友人がいて、その話を最近よく聞いていたからかもしれません。

 さて、そして、おすすめいただいていた「マジック・フォー・ビギナーズ」を読み始めました。九つの短編が収録されていますが、今は四つめの「石の動物」を読んでいます。
 非現実をとうぜんの現実として書いていて、なんとも言えない空間に立たされている気分です。
 特に、「石の動物」はどうしようもない気持ちの悪さもただよっていて、一気に読んでしまうと気分が悪くなりそうな気がしています。気持ち悪さのある小説、というと、私のなかでは小野洋子さんや吉田修一さんが代表格なのですが、そことも系統がちがう感じ。

 私は、日本人の恐怖と外国人の恐怖は根本的なところがちがうと思っていて、日本人の恐怖は、害はないけれど目の前にたたずまれる恐ろしさ(夜道にだれかがぼーっと立っているとか、追いかけてくるだけで襲ってはこないとか)、そして、外国人の恐怖は、害があるのにその主が見えない恐ろしさ(ポルターガイストなど)、に分けられるのかな、と思っています。もちろん、必ずしも二分できるわけではないけれど、確実に、恐怖の種類はちがうと信じています。
 「石の動物」は、その、日本人は描かない種類の恐怖が全面に押し出されてる感じ。だから余計に、感じたものをうまく吐き出す方法がわからなくて、気持ち悪さばかりがつのってくるのかもしれません。

 さて、そして、推薦で本をおすすめいただき、ありがとうございます。今の時点でかなり積読本がたまっている状態なので、読み始めるのはかなり先になってしまうとは思いますが、のんびりとお待ちいただけると幸いです。
2008.04.06
 書店をふらふらと歩いていたら、「逝年」を見つけました。石田衣良さんの「娼年」の続編です。「娼年」はとっても大好きで大切な小説で、すぐにでも「逝年」を読みたくてうずうずしています。ほかに読む予定の本が多すぎてひとまず購入は見送りましたが、できるだけ早く読んでみたいです。
 書店へ行くと、読んでみたい本があまりに多くて、もっとがんばって本を読まなきゃとても追いつかないな、とはっぱをかけられます。
2008.04.04
 「ICO」、今、イコ視点で進んでいた物語の前半部分から、ヨルダの視点に移りました。元がゲームということで、どんな画面で進んでいくのか、想像しながら読んでいます。
 普段まったくゲームをしないので、まったくの自由な空想ですが、こういう読み方は普段しないので、楽しいです。