メモ
2007.07.27
「ななつのこ」をおすすめいただき、ありがとうございます。さっそく昨日、買ってきました。今は「愛の領分」を読んでいるので、こちらが読み終わり次第、読み始めたいと思います。

 最近、水面下でいろいろと動いています。沙々雪は2005年の12月13日に始まったのですが、その2周年のときにでも公開できたらいいなと思いながら、作業をすすめてます(気の長い話ですね)。自分で納得のできるものになるよう願いつつ。
2007.07.24
 ここ最近、読んだことのない作家の本を集中して読もうと思っていました。一度でも読んだことのある作家の作品はあとまわしにして、新しい作家の開拓に力を入れたくなったのです。
 が、その考えが、あっさりとひっくり返されました。勇嶺薫さんの、「赤い夢の迷宮」を見つけてしまったからです。

 小学校のころに出逢った「そして五人がいなくなる」からずっと、私の読書歴のなかではやみねかおるさんは、とても重要な位置を占めてきました。児童書を書き続けてきたはやみねさんが、勇嶺薫として本を出すのは初めてのこと。

 でも私は、勇嶺薫という名前を知っていたし、「赤い夢の迷宮」という本のタイトルにも、確かに聞き覚えがありました。はやみねさんは、夢水清志郎シリーズの冒頭に、勇嶺薫の作品からの引用というかたちで、すでに「赤い夢の迷宮」という作品の存在を示していたからです。
 ぞっとするような、なのに強く惹きつけられるような、はやみねさんが書くものとはちがう確かな闇を感じる小説を、当時の私は心から読みたいと願っていました。けれど、調べてみても勇嶺薫が出した小説はない。ああ、これは架空の小説なんだ、私はこの小説を読むことはできないんだと、心底から寂しくなったのを覚えています。
 たった数行のその引用文を初めて読んでから、もう十年が経とうとしています。ようやく、本当にようやく、夢がかないます。

 十年も経てば、当時はやみねさんが考えていた物語とは、違った流れになっているかもしれません。文体だって、十年経てば変わっていてあたり前です。今手元にある「赤い夢の迷宮」が、十年前の私が期待したものなのかはわかりません。けれど、たとえ期待とは違っていたとしても、それは関係のないことなのです。こんなにも待ち焦がれた架空の本が、この世に存在している。それだけで、うれしさに震えんばかりです。

 幼少期の体験ってずっとあとまで人に影響を与えるのだと、こういうときに痛感します。たった一冊の本にこんなにも強い反応を示すことは、めったにあることではありません。
2007.07.18
 昨日から読み出して、一気に「GO」を読了しました。昨年のおわりごろに言っていた、ここ10年弱の直木賞受賞作品を読んでみようという試みの一環です。せっかく読むなら年代順に一気に読もうなんて思っていたんですが、そんな縛りを入れるとちっとも読み進められないことに気がついたので、気楽に気の向くままに読んでいくことにしました。

「GO」はもともと気になっていて、文庫化するのをずいぶん待っていたんですが、文庫化してからは“いつでも読める”なんて思ってしまってなかなか手がのびず…。話題になっていた時期からはずいぶん経ってしまいましたが、あれだけいろいろ取り上げられたのが納得できる、力のある小説でした。「いつか、俺が国境線を消してやるよ」はほんとに名ぜりふ。
 単純にいい話とか、単純にかっこいい話って、実はむずかしい。ひねくれたがる読者の心をひっつかんでがっちり前を向かせるような、こういう力に満ちた小説って、掛け値なしに気持ちがいい。やっぱり、私は直木賞受賞作と相性がいい気がする(ちなみに、芥川賞は全体的にちょっと苦手)。

 でも、石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」シリーズを思い出してしまうのは、たぶん私だけではないはず…。
2007.07.17
 昼過ぎに「奉教人の死」を読み終え、それからほぼ休みなく読み続けて、「宇宙でいちばんあかるい屋根」も読了してしまいました。こんなに一日中本を読んでいた日は久しぶり。

「宇宙でいちばんあかるい屋根」は、数年前にハードカバーで見つけてから、文庫化するのをずっと待っていた小説でした(文庫化してから一年経った今になってようやく読んでいるのだから説得力がないけれど、本当に心待ちにしていたのです。読書スピードが追いつかなかっただけで…)。だから、読み出して驚きました。ものすごく相性が合わない感じがしたのです。私はかなりプライドの高い子どもで、いまだにその記憶がつよいものだから、子どもがばかにされるというシーンに反射的に反感を持ってしまう。なので、星ばあのつばめに対する態度がどうしてもうまく消化できなかった。

 だから、「宇宙でいちばんあかるい屋根」を好きな小説だとは言わない。でも、星ばあが“だれ”だったのかがわかった瞬間やつばめが星ばあに語りかけたことば、それぞれに心がうずいたのも確かです。
 中学二年生のつばめの視点ですすむ物語は、一見とても穏やかに見える。それはたぶん、つばめがずいぶんクールな考え方の子どもだからだろう。けれど彼女の周りで起こっているものごとは、並大抵でなくヘビーだ。それをあえてストレートに書かず、あくまでもつばめの恋心だとか星ばあとの空間だとか、やわっこいものや非日常を軸に描く。これはなかなか難しい。読むほうも難しい。問題がそこに転がっていれば、そればかりに意識を向けたくなってしまう。

 とびきり好きな本にも、特別な本にもならないだろうと思う。けれど、たぶんいつも、心のどこかに住み着き続けていく気がする。
2007.07.06
「月光スイッチ」、昨日夜中までかけて、一気に読了してしまいました。おすすめ、ありがとうございました。
 昨日のメモで、橋本さんの書く話はシンプルなのにやけに質感がしっかりしてるというようなことを書いてたんですが、その理由がすこしわかった気がします。
 橋本さんが小説のなかで描くのは、主人公が出会ったものごとと、それに対する気持ちだけ。これって要するに、人生を描いてる、ってことなのかもしれない。

 主人公である香織はとても感情の強い女性で、感情が強いということは、その人を幸せにも不幸にもすることだ。不倫の恋に盲目になってしまうのも、子供を相手に100%の本気になってしまうのも、きっとそんな感情の強さから来ている気がする。
 この本がラストを迎えても、なにかが完全に終わったわけでも、始まったわけでもない。けれど、そんなことはあたりまえだと思えてくる。だって、描かれているのは人生なんだから。

 ところで、橋本さんの小説は、いつも夏のイメージがつきまといます。去年まで夏は好きな季節だった気がするのに、まだ初夏なのにもかかわらず今年は体力面でずいぶんしんどい思いをしています。夏を楽しむためだけにでも、体力をつけたいと真剣に思っているところです。