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ピックアップ10冊 2007年
2007 年に読んだ本のなかから特に印象的だったものを 10 冊ピックアップしてみました。
明確な順位をつけたわけではありませんが、ざっくりと上の方がより面白かったものです。
番号が ピンクのものは小説緑のものは小説以外 です。

01ハミザベス』 栗田 有起
死んだ父から受け継いだのはマンションとハムスター。ひとりと一匹で始めた今までと違う生活。読みやすく、心地良く、純粋無垢な「小説を読む楽しさ」を提供してくれた。本を読むことに疲れたら、きっとこれを開きたくなる。
02プラネタリウムのふたご』 いしい しんじ
ふたごのテンペルとタットルがそれぞれに紡ぐ人生の物語。独特の文体で語られる、どことも知れない、けれど確かに生身の人間が生きている世界が魅力的だ。織り重ねられる挫折と喜び、そしてほのかだけれど確かに差す希望の光。
03『ロリヰタ。』 嶽本 野ばら
小説家の「僕」と、彼が偶然出会った雑誌モデルの少女。ふたりが育む無垢でまっさらな恋と愛は、痛いくらいに眩しく切ない。正統派の小説ではない。けれど、このふたりの物語を読むと形式にこだわることが馬鹿げて思えてくる。
04雪の断章』 佐々木 丸美
孤児の飛鳥が出会った、哀しく美しい真実の愛。甘ったるすぎると言うひとがいるかもしれない。好き嫌いの分かれるストーリー展開だとも思う。けれど私にとっては、この本に対する愛しさだけで涙があふれそうになる一冊だ。
05『老ヴォールの惑星』 小川 一水
SF 短編集。正直、二、三作目は読み飛ばしてもいいかなというくらい大した面白さはなかった。けれど、一、四作目、特に四作目の「漂った男」は絶対に読んだ方がいい。背筋を駆け抜ける興奮とカタルシスを味わわせてもらった。
06『ガールズ・ブルー』 あさの あつこ
青春小説を苦手とする私が女子高生を主人公とする本に惚れてしまった。ガラが悪いと地域に知られる高校に通う理穂が、友人たちと送る日々。一人称の文章はあっけらかんと軽やかで、だけどぐっと刺さる言葉があちこちで現れる。
07『天上の青』 曽野 綾子
上巻を読んだ時点で面白さを感じず、ずっと放置していた。それが、いざ最後まで読み切ってみたら終盤で涙が止まらなくなってしまった。気分の悪くなるような描写もあるけれど、それを押してもひとに薦めたくなる一作。
08『読書力』 斎藤 孝
読書の効用について。私は「本が好き」というのがコンプレックスで読書は一個人の趣味として秘めておくつもりだったのだけど、この本はそういう考えを打ち壊して「ひとに読書を勧めなければ」という決心をつかせてくれた。
09『愛するということ』 エーリッヒ・フロム
一人で立つことのできない人間はひとを愛することはできないという、当たり前だけれど実現できていない人も多いことを語っている。同意しかねる部分もあるけれど、「誰かと一緒じゃないと寂しい」と感じることのある人はぜひ。
10屍鬼』 小野 不由美
地縁血縁によって閉じた一つの僻村が、とある災厄によって滅んでゆくさまを描く。設定や筋立ての恐ろしいまでの密さはもちろんなんだけど、私は静信という一人の登場人物によって何ヶ月も立ち直れないほどに心をえぐられた。
2011.06.01