ご無沙汰していました。
「代表的日本人」にずいぶん時間をかけた後、ようやく「きみのためのバラ」を読みました。八つの短編が収められているのですが、そのひとつひとつを読み終えるごとに小休止を入れながら、ゆっくり読みました。そういう読み方をしたくなる雰囲気がありました。
ひとつの人生のなかで決して消えることのない記憶をそっくりとりだして、それをただ正確に書き綴った本でした。どこにも無理やひずみのない、ただ書き綴っただけの本。それは、この本がひとつの事象やひとりの人物によって立っていない、ニュートラルで広い視線から書かれているからかもしれません。
それぞれの物語は完璧に独立していて、だから“この本の感想”というのをうまくことばにすることができません。穏やかな冬の日の午後に読むのが一番似合うような、不思議なぬくもりのある本でした。
物語が、ではないのですが、「20マイル四方で唯一のコーヒー豆」に登場した“彼”が、もっとも印象的な登場人物でした。
おすすめ、ありがとうございました。池澤さんの書いた長編も、読んでみたくなりました。
大学で、二週間おきに課題図書が出て感想文を書くという授業があります。木曜日に「代表的日本人」を指定されて、さっそく買ってきてあります。
先におすすめいただいている「きみのためのバラ」をまずは読むのが本当だと思うのですが、「屍鬼」の余韻がいまだに消えやらず、なかなか小説を読もうという状態になれません。期限が決まっているということもあるので、本当に申し訳ないのですが、「代表的日本人」を先に読ませていただこうと思います。「きみのためのバラ」はきちんと落ち着いたときに読みたい、と思うので。
とはいえ、「代表的日本人」もなかなか読み始める気にはなれません…。
13日から読み始めていた「屍鬼」を、今日読み終えました。ページを閉じてしばらく呆然とし、その後静信のふるまいを想って、泣きました。
最初は、静信に共感して自分は泣いているのだと感じていたのですが、改めて考えてみると、おいそれと共感ということばを持ち出すには、彼はあまりにも特異な心の動きをしたことを思い起こさずにはいられません。ならば憐れみだろうか、それとも恐怖だろうかといろいろに可能性を思い浮かべてみたものの、なにがあふれて涙になったのか、自分の内をのぞけばのぞくほどわからなくなります。
ひとつの村をまるごと舞台にした「屍鬼」には、途方もないほど多くの登場人物がいます。網の目のような血縁につながれた彼らのすべてを、一読しただけではなかなか把握しきれません。間違いがないのは、その多くの人々のなかで、私はだれよりも静信に心動かされ、同調していたということです。
誤解されるだろうことを覚悟で言うと、読まなければよかったと思いました。小野不由美さんは、なんの遠慮会釈もなく、じかに感情に触れる小説を書く人なのだと痛感させられました。文字通りの痛感です。なにものも媒介にせず直接感情に触れられることほど、痛いことはありません。痛みというよりも、痛いと知覚することもできないほどの強すぎる刺激です。
読んでいる最中もなんどか嗚咽がもれましたが、すべて、静信に係わる場面でした。私はなににこれほど反応しているのか、それが見えなかったために、私は読了後に呆然としてしまったのかもしれません。
読まなければよかったと思うほど強い小説を読んだ経験は、思い出せる限り、とても少ないものです。その少ない経験則があてになるのであれば、時間が経ち、強すぎる刺激をどうにか消化し飲み込むことができれば、そのときには、おそらくかけがえのない存在に昇華されるだろうと思います。それまでの時間は、じっと忍んでいるしかありません。
おすすめいただいている「きみのためのバラ」はもう手元にあるのですが、読み始めるまで、少し時間をもらいたいと思います。
「タビと道づれ」、今日買ってきて二巻とも一気に読み終えてしまいました。
先入観を持つのがいやで、事前にあらすじを読むことはあまりしないようにしています。今回も予備知識なしで読み始めたのですが、表紙やタイトルから勝手に想像していたのとは内容がちがっていて、少し驚きました。
流れているやさしい雰囲気やイラストのタッチはイメージ通りだったのですが、日常系のコミックだと勝手に思っていたのでファンタジー要素がつよくてびっくりしたのです。でも、私が漠然と考えていたより、ずっとずっと素敵なお話でした。ブレイドコミックは自分からはなかなか手を出さないので、おすすめいただけてよかったです。
たぶん私は、作者のたなかのかさんの感性がとても好きで、だからこんなにも心地よく感じるんだろうと思います。描かれる人々のそれぞれの気持ちがさりげなく、しかも無理なく丁寧に表されていて、読んでいてなんとも気持ちがよかったです。三巻を、楽しみにしていようと思います。おすすめ、本当にありがとうございました。
「タビと道づれ」のおすすめ、ありがとうございます。明日にでも、書店に立ち寄って探してみようと思います。
一巻に何日もかけていたのが嘘のように、「屍鬼」をぐいぐいと読み進めています。決して頓狂ではない、リアルな感触を失わないファンタジーを綿密に描ける小野不由美さんというのは、とても稀有な作家だと実感します。すべての感想は、五巻まで読み終えてからにしようと思います。