あさのあつこってすごい。
「バッテリー」や「NO.6」でそのべらぼうな人気だけはよく知っていたけど(最近電車のなかで見かける読書する人の「バッテリー」率はとても高い)、いつか読もうと思いながらそのままになっていた。というのも、初めて読むあさのあつこは「NO.6」にしようと決めてたからだ。ずっしりきそうな物語の質感を予感して、これはまとめて読んでやろうと思っていた。
けど、ふとコンビニの文庫本コーナーで「ガールズ・ブルー」が目に留まってしまった。あ、シリーズものじゃなくて単品小説で私のなかのあさのあつこが始まるのもいいかも、なんて、思ってしまった。こういう勘に、たいていはずれはない。「ガールズ・ブルー」は、よかった。
自分が女の子だって、自覚がある人は、ぜひ一読してみて欲しい。男じゃ絶対かけない世界がひろがっている。魅力的な主人公が描かれている。
「ガールズ・ブルー」の余韻にひたりたくて、まだ、次に読む本が選べません。
私は、あさのあつこさんという作家に少しだけ反感を抱いていた。たぶん、「バッテリー」のコミック版を先に読んでしまったのが要因だと思うのだけど、ほのかなBL要素ありの小説を書く作家だと思っていた。それはまったくかまわないのだけれど、それを児童書の世界で展開されることが私のなかで反感の原因となってしまった。児童書は、私にとって一種神聖とも言える世界だから。
けれど、少なくとも、自分が読んでいない小説に対してイメージでどうこう言う気はきれいさっぱり失せた。すべては自分で読んでからの話だなと、ひとり納得してみたりする。
ところで、「ガールズ・ブルー」を見つけたコンビニには、ちょっとした書籍コーナーができている。文庫が100冊弱に、コミックは400冊くらいあるだろうか。雑誌コーナーよりも格段に広い。しかも、ブックカバーまでかけてくれる。
品揃えがなかなか私好みで、100冊の文庫本の中から気になる本を3冊や4冊は見つけられる。もともとの冊数が少ない分、気になる小説を見落とすということもない。常連ではないけれど、たまにチェックを入れておきたくなる。本を忘れて出かけてしまった日にお世話になったことも、二度ほどある。
「ルール」を読みました。戦争小説です。なにを言えばわからないくらいに、重量のある小説でした。
人は、ルールがないと生きていけない。それなりの規律にしばられていなければ、人は人らしい生活を営めない。けれど、ルールを破らねば生きられない時代が、場所があったということ。それをまざまざと見せつけられる。
読み終えて感じたのは、途方もない徒労感。けっして報われない労力を払い続けるというのは、そしてそれから逃れるすべがないというのは、なんて残酷なことなんだろう。
考えたのは、私が知っている戦争の光景というのはすべて“戦時中”であり、“戦争”ではなかったのではないかということ。
そうそう気軽に手は出せそうもありませんが、古処さんの小説は他にも読みたいと思います。
ところで、読んだことのない作者の本を一気に読む、というのを一旦おやすみします。このまま他の本を読んでも絶対に「ルール」に気持ちがひきずられてしまうと思うので、「キノの旅」でも読みながら「ルール」を消化します。正直なところ、「ルール」の世界から逃避したい、という気持ちもあります。
4日に読んだ「ハミザベス」がものすごくいい本で、読書するパワーが充電されました。本を読んでつまらないと感じることは少ないんですが、それなりに面白い本とお気に入りになる本はやはり別もので、長くお気に入りを見つけられないでいると読書パワーが落ちるのです。しかも読書パワーを充填するにはただ好きだと感じる以外にも、読みやすくて心地よい小説でないといけないらしく…。
「ハミザベス」で、とっても久しぶりにパワーを充填できました。というわけで力が戻ったところで、読むのにパワーを使いそうな「ハサミ男」を読みました。
この本を最初に目に留めたのは、たぶん1年か2年まえ。最近、気になってはいるけどまだ読んだことのない作者の本をまとめて読んでみようと思い立ち、書店で何冊かまとめ買いしたときにふと目につき、手にとってみました。でも実は、買うか買うまいかずいぶん迷ったんです。タイトルとあらすじを見て、おそらく読むのがしんどい小説だろうと思ったからです。人が死ぬ小説は、内容を問わずに独特の重さがつきまとうのです。
とはいえやはり気になっていたのも事実で、とりあえずは買っておこう、というくらいの気持ちでレジへ持っていきました。
そして、思いのほか早くにパワー充填できてしまったので、他の本でパワー消費する前に読んでおこう、という気持ちで「ハサミ男」を読み始めました。
内容は、ひとことで言えば予想以上。トリックが明かされたとき、一瞬頭のなかが真っ白になりました。くわしいコメントをしようとするとせっかくの驚きをうばってしまいそうでいえませんが、最初からもう一度読み直したくなることうけあいです。
…でも、なぜだか私は真犯人の初登場シーンで、この人が犯人な気がすると感じていました。うーん、なぜだろう…。
「ななつのこ」をおすすめ頂き、ありがとうございました。昨日読了しました。ほんとうは昨日のうちに感想を書きたかったのですが、時間がとれず今日にのびてしまいました。
ひたすらノスタルジックに描くことも、やわらかく暖かく描くこともできる題材とストーリーだと思うんです。けれど、加納さんはそうしない。主人公が暮らしているのはあくまでも現実と地続きの平凡な世界で、ほほえましいだけではない。読み始めたときは、想像していたのと違う展開の仕方に正直とまどいました(タイトルや表紙イラストから、やさしさで満ち満ちた小説を想像していたのです)。
けど、最後まで読み終えて、なんともいえない心地よさに包まれました。ああ、駒子が生きているのは現実だから、いやなことだって理不尽だっておこる現実だから、彼女が出会ったささやかなミステリーを日々のなかの潤いと感じられるんだな。そんな風に思ったのです。まゆちゃんと世界を共有できる底の深さをもつ駒子に、確かな憧憬を感じてしまいました。
…さて、そして昨日から「となり町戦争」を読み始め、今日読み終えました。刊行当時から目に留まっており、文庫化したのを知ってから読もう読もうと思い続け、ようやく手をつけられました。
アマゾンのレビューでつけられた星の数からして、賛否両論のある作品であることはうっすらわかっていました。そして私は、そういう作品に対して『否』派に入ることが多い傾向にあります。だから、“とりあえず読んでおこう”という程度の気持ちで読み始めました。けれど、やはり例外というのはあるものです。いい小説じゃないか、というのがまず第一印象でした。
心地いい小説とか、あっけらかんと面白い小説よりも、どこか不安定で、ひとことではまとめられないような小説に反応してしまうタチの私としては、着想の面白さと不必要に盛り上がらない文体にぐっと心を持っていかれました。ここは気持ちのいい場所なんですよ、とやさしく頭もなでてくれる小説は必要ですが、ここにいてもきっと落ち着かないと思いますよ、と飾ることなく淡々と伝えてくれる小説もまた、私にとっては気持ちのいい存在なのです。
三崎さんの他2作品のあらすじを見ると、どうも「となり町戦争」と根底に流れるものはおなじ小説のようです。もし、彼が今とはまた違った視点に脱皮することがあったなら、そのときに書く小説は、とんでもない名作になるような予感がします(…と、とんでもなくえらそうな言い草ですが、直感的にそう感じてしまったのです)。
「愛の領分」を読了しました。ここ十年ほどの直木賞受賞作を読破しようという試みの一環です。
どうも私は直木賞と相性がいいようで、読む本すべて心地よく読めています。質感などが、とても性に合うのです。ちなみに、そういう傾向でいくと芥川賞受賞作が苦手です。ごくまれに読みたい、と感じる作品もありますが、その中であたりだったと感じられることはさらにまれです。
つぎは、おすすめいただいている「ななつのこ」を読み始めようと思います。
そして、「スカイ・クロラ」をおすすめいただき、ありがとうございました。……しかし、「スカイ・クロラ」は、もうすでに何度も読んでいる小説なのです。ちなみに、森博嗣さんのページのExtraとして感想も書いています。お手数とは思いますが、おすすめいただくときには、トップページにインデックスがつくられている作家さんのページをチェックしていただけるとありがたいです。とはいえ、読了本すべてが載っているわけではないので、チェックいただいても読んだことのある本をおすすめいただく可能性もあるのですが…。
いずれにしろ、おすすめありがとうございました。
さて、先日ひさしぶりにゆっくり書店をうろついてみたら、集英社文庫の背表紙が新しくなっていてちょっとびっくりしました。集英社は、私にとってはわりとあたりはずれが激しい出版社なのですが、そのぶんなかなかお目にかからないようなおもしろい小説を見つけられる可能性も秘めています。しばらくは読んだことのない作者ばかりを選んで読んでいくつもりなので、集英社文庫の作品を読む機会も増えそうです。
そういえば、初めて「雷」のお天気アイコンをつかいました。関東では、夜から激しい雨と雷です。雨好きとしては、心躍る空模様でした。