パソコンが壊れてしまいました。
壊れたのは自分専用のパソコンで、家族のパソコンを借りたり大学のパソコンを利用したりということはできるのですが、やはり人のパソコンにFTPソフトやら自分のデータやらを入れるのはしのびなく…。おそらく今月いっぱいほど、更新が停止します。
メモは様子を見て書いていくつもりですが、読書履歴などについてはまったく更新はないと思います。どちらにしろ、あさってからハワイでとり行われる姉の結婚式に出席するため、一週間ほどはメモについても更新停止となりそうです。
今は、角田光代さんの「みどりの月」を読んでいます。
この本には、「みどりの月」と「かかとのしたの空」という二本の小説が収録されています。電車のなかで隣にすわっている人が読んでいるのを見て、「かかとのしたの空」というタイトルに惹かれて読んでみたいと思っていたのです。
角田さんの本は、「これからはあるくのだ」というエッセイを読んだきりで、なんとなくほんわかふわふわしたお話を書く人なんじゃないかと思っていました。でも実際に読んでみると、吉田修一のなんとも言いがたい居心地の悪さを感じる小説や、小川洋子の描く直線がゆがんでいくような世界観に近いものを感じてしまいました。
エッセイと小説はまったくの別ものだなぁと、ふだんあまりエッセイを読まない私は、ずいぶん強く実感させられています。
ここのところ、いきおいに任せてどんどん本を読んでいます。
嶽本野ばらさんの小説を3冊読みましたが、間に他の作家の本を1冊ずつはさんで、連続では読んでいません。野ばらさんの小説は伝えたいテーマがどの小説でも共通で、しかもそれが確固として存在しているから、へたに続けて読んでしまうと、それまで読んでいた世界から新しい世界へ、うまくジャンプできないのです。
買いためてある小説のうち、野ばらさんのものはこれですべて読み終わったので、ひとまず打ち止め。ちょうど今日読み終わった「ロリヰタ。」は、野ばらさんのページをつくったときにExtraになる予感です。でも、野ばらさんのページをつくるのはすべての著作を読み終えてから、と決めているので、とうぶん先の話になりますが。
ひとりの作家さんのページをつくるとき、ある程度冊数を読みためてから、と思うこともあれば、1冊読んで即座にページをつくることを決めることもあります。これは、それぞれの作家さんの書く小説の性格の違いであって、決して優劣がわけるものではないのですが、それにしてもぱっきりわかれるのは、ちょっと興味深いものがあります。
「狐笛のかなた」を読んでいました。書店で文庫版が平積みされていたときから気になっていたものを、ようやく読むことができました。
作者の上橋さんはもともと児童文学を書く方で、この「狐笛のかなた」も児童書として書かれたものを文庫化したとのこと。あとがきで上橋さんが、ご自分にとってのこの物語の位置付けを語っているのですが、そのあまりに優しく柔らかくまっすぐな視点に、思わずうっとりします。
守り人シリーズという、上橋さんの代表作にあたるシリーズは以前から気になっていて、せっかくシリーズものを読むなら一気に読み上げたいという思いの強い私は、ひとまず他の作品から…という気持ちもあって、「狐笛のかなた」を読み始めました。
日本の情景が根底に流れる、けれどどこともいつとも知れない世界でのファンタジー。地に足の着いていないふわふわと夢心地であるだけのファンタジー小説は好きになれないのですが(ファンタジー=何でもあり、という考え方にも拒否反応が出ます)、だからこそ、骨太な世界観で、登場人物が生き生きとしているファンタジー小説は大好きです。私はハリー・ポッターシリーズがどうしても苦手で、児童文学としては主人公至上主義のような価値観は浅薄すぎると思えてしまうし、ファンタジー小説としてはあまりに設定に奥行きがなさすぎる。そんな私にとっては、対を成すように心地いい物語でした。
洋物ファンタジーに疲れを感じてしまう人に、ぜひぜひおすすめしたい一冊です。
今、「フォア・フォーズの素数」を読んでいます。かなり前に買ってあったのを、ようやく読み出しました。
13篇の短編から成っているのですが、今は最後の1編を読んでいるところ。予想していたよりもずっと心動かされる小説で、私にとってかなり大きな存在となりそうです。
竹本健治というと「匣の中の失楽」を高校生のころ、図書室で借りて読んだことがあります。こちらに関しては正直なところ、構成の奇抜さ以外には特に印象に残ることはなかったのです。だからこそ、「フォア・フォーズの素数」にこんなにも心惹かれていることが、不思議でもあります。
人の感情をあまりにも理性的に描く、そのことに寂しささえ感じさせられる。今までに読んだことのないタイプの物語です。
今日、「ほしのこえ」を読み終えました。「ほしのこえ」は、佐原ミズさんが描いた 漫画版で初めて知ったのですが、やはり最初のイメージというのは強いらしく、読んでいる間中ずっと佐原さんの絵が頭の中にありました。
小説の方は、ミカコの視点で書かれた「あいのことば」と、ノボルの視点で書かれた「ほしをこえる」のふたつの話で構成されています。どちらも、読み進めれば読み進めるほど没頭してしまう、とても不思議な雰囲気の小説でした。あらすじはわかっている状態で読んでいるので、決して目新しさがあるわけではないのですが、物語が佳境に入るとページをめくる手を止められない。
「ほしをこえる」のラスト近く、『もちろん、君は生きてこの星々のどこかにいる。』というノボルのモノローグに、物語全体をぼんやりとただよっていた胸をしめつけるような雰囲気が、一気に質量を持って迫ってきます。“信じる”以外の方法がない状態で、つよくつながるミカコとノボルの姿はなんとも切なく、同時に愛にあふれているのです。
原作者の新海さんのほかの作品はまだ観たことがないのですが、ぜひ触れてみたいと思っています。こんなふうに透明で、強くて、鮮やかなストーリーを紡ぎだしてくれる人がいること、そしてそのストーリーに触れられることは、とても幸運なことだと思っています。
ちなみに、漫画版を描いた佐原さんは私の大好きな漫画家さんのひとり。最近出した「マイガール」は、あったかくて、やさしくて、必見です。お父さんと女の子のお話なのですが、各所にちりばめられたちょっとしたせりふやシーンが胸にぐっときて、たった一冊読みきる間に何回涙腺がゆるみかけたことか…。漫画を読む方には、ぜひともおすすめします。