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ピックアップ10本 2011年
2011 年に観た映画のなかから特に印象的だったものを 10 本ピックアップしてみました。
明確な順位をつけたわけではありませんが、ざっくりと上の方がより面白かったものです。

01BIUTIFUL ビューティフル
末期癌で死を目前にした男の最後の生き様。死に際した人間の物語など食傷するほど見てきたはずなのに、この映画の重量感はどうだろう。他の映画を観た時とは明らかに違う、作品そのものがまるごと自分の身のうちに沈み込んでくる感覚を味わった。この映画の存在感はきっと薄れない。
02羊たちの沈黙
多くの人々を魅了してやまないハンニバル・レクターというひとに初めて触れたわけだけれど、ものの見事に魅了された。『ハンニバル』ら続編もあるけれど、この一作目がやはりずば抜けていると思う。人喰いのレクター博士と女性捜査官クラリスの危うい綱渡りの会話に引きつけられる。
03ザ・ファイター
実在のボクサーであるミッキー・ウォードを、その家族との関係を中心に描いている。血のつながりというのは絆であり、同時に呪いでもあると思う。その呪いと真っ向から向き合って逃げず、甘えず、しかも何も諦めず闘い抜いた、そして呪いをまた絆に蘇らせたミッキーの姿にただ純粋に涙が出た。感動作っていうのはこういう映画のことを言うんだと思う。
04新少林寺/SHAOLIN
タイトルのせいで、未見のひとも映画自体もものすごく損をしているんじゃないかと思う。この映画には、いわゆる「カンフー映画」とは一線を画す重厚な人間ドラマがある。アクション映画というよりも宗教映画と言ったほ方がまだ正しいような、ひとの生き方そのものが描かれている。
05僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.
日本の大学生がカンボジアに小学校を建てる。御本人による自費出版本を元に映画化された。日本映画独特のえげつなさがあるわけではなく、娯楽邦画のあの薄っぺらの類いでもない。青くて素直な、等身大でありのままの大学生の姿がある。気持ちのいい一作。
06誰も知らない
現実に起こった子供置き去り事件を題材にとって、マンションの一室で子供たちだけで暮らす閉じられた世界を描く。悲しくて、苦しくて、痛ましくて、そしてそのどの思いも本人たちには届かない、どうしようもないほど小さく、誰も知らない物語。きっと邦画でしか描けない情景がある。
07『半分の月がのぼる空』
入院先の病院で出会った生意気な女の子との、騒々しく、儚く、そして幸福にきらめく日々の記憶。原作小説には正直それほど惹かれなかったのだけれど、独特のざらついた画面と構成の妙に思わず心を持っていかれた。特別うまさを感じさせるわけではないのだけれど、ところどころでとてもいい顔をする主人公ふたりがまた心をかき混ぜる。
08マルドゥック・スクランブル 圧縮〈完全版〉
美麗な作画のアニメーションというのはもうそれだけで魅惑的だけど、その上さらにハードボイルド・サイバーパンクとくればもう言うことはない。もっと、もっとと直截なえげつなさを求める気持ちにさせてしまうところがこの映画がどれだけ魅力的かを表していると思う。退廃というのはやはり魅力。無印も観たけれど、キツい描写が増えた〈完全版〉の方がいい。
09『フィリップ、きみを愛してる!』
実の母に否定された反動か、どこか破綻した性格の主人公スティーブン・ラッセルは実在の脱獄王。ゲイで、刑務所のなかで一生ものの恋に落ち、出所した想い人を追いかけては脱獄を繰り返す。あまりに破天荒だし危なっかしくもあるこの人だけれど、それでも彼が魅力的なのは、彼が愛されることでなく愛することを求める人だからだと思う。ぐるっと回って清々しい、馬鹿げたようで純粋な恋の話。
10マイレージ、マイライフ
リストラ言い渡しを生業に国中を飛び回るライアンを主人公に、ちょっとしたユーモアと、ちょっとした悲しみと、ちょっとした感動を絶妙にブレンドした、人生のなかのちょっとした転機のお話。肩の力を抜いて、ゆるっと観てほんのりと楽しめる、そしてふと自分のことなんかも振り返ってしまう、どこか味わいのある映画だった。


 2011 年には 69 本の映画を観ました(鑑賞記録 2011 年)。
 実は、「2011 年は 70 本くらい映画を観れたらいいなあ」と年始に考えていました。それをふまえると目標に一本足りずなのですが、3.11 の前後で生活環境が変わり、空き時間が激減したなかで「70 本はまず無理だろう」と思っていたので、69 本という数字には満足感こそあれど後悔はありません。

 下手な鉄砲も数打ちゃ当たる、というと言葉が悪いですが、観た本数が増えた分名作にも例年より数多く会えた年でした。やはり、出会いを増やすというのは単純に強いなと実感します。
 絞り込んだ上記 10 本以外にも好きになった映画の多い年でした。『イップ・マン 葉問』、『君のためなら千回でも』、『ミケランジェロの暗号』、『28 日後...』など。

 あと、映画とはある種なんの関連もない話ではありますが、ジェレミー・レナーという俳優と出会えたことがとても大きな喜びである年でした。人生史上初めてと言っても過言ではないほどののめり込みぶりを見せ、彼が出演しているからというだけで何本かの映画を追いかけました。というか、今も追いかけている最中です。いつまでこの熱が続くものかわかりませんが、目一杯楽しむつもりです。
 「ミッション:インポッシブル」シリーズは彼が出演している最新作「ゴースト・プロトコル」を観るためだけに 1 〜 3 まで予習してみました。冷酷さや悪虐さの目立つキャラクターを演じることが多かった彼が「ゴースト・プロトコル」では少し情けなさのあるシーンもあって、それがまた新鮮で楽しく。骨の髄まで愛してしまいそうな勢いです。

 2012 年は、DVD 化済みの映画を消化してゆきたいなと思っています。とはいえ、やはり劇場公開中の映画を優先してしまうので(出来るだけスクリーンで観たいたちなのです)、どこまで有限実行できるかは定かではありません。
2012.01.07